2019年01月24日

心房細動の予測因子としてのBNP

心房細動の予測因子としてのBNP

Data-driven discovery and validation of circulating blood-based
biomarkers associated with prevalent atrial fibrillation



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 心房細動は増加傾向で、患者さんにとっても生涯に多くの負担を強いられます。とは言え予防として多くの人に心電図をスクリーニングをするのは、患者負担が大き過ぎます。
そこで、血液検査でBNPとFGF-23を検査することにより、心房細動のリスク管理としてその後の経過や
治療に役立てようとする論文が発表になっています。
統計学的処置(コーホウ研究)が大変関わっていますので、浅学の身としては、ザックリと切り捨てて纏めてみました。



1) 入院の照会があった明らかに心房細動のある患者又はCHA2DS2-VASc が2点以上の患者638名
   を、2014~2016年にかけて調べています。
   全ての登録患者に7日間のambulatory ECG(イベント心電図)を実施して、silent AF(発作性
   心房細動など)は除外しています。
   登録と除外に関しては、下記のsuppleのPDFをご参照ください。

2) 血液検査(biomarker)の中で、BNPとFGF-23の二つが最も心房細動の予測因子でした。
   尚、FGFは保険適応外のため本院では実施していません。
   BNPは心房の拡張に関係します。圧と容量の負荷が心房に関わっているとBNPは増加します。
   そのため心房細動と密接に関係してきます。つまりその負荷を軽減する事、すなわち降圧が心房
   細動の発生を低下させます。
   一方FGF-23は心筋細胞の再構築(remodeling)を促し心筋細胞の異所性の興奮を惹起して、
   心房細動の誘発に関与してきます。

3) 結論的には、下記のグラフの様にそれぞれの重要度が示されています。



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私見)
 多くの心房細動の患者さんは、既にBNP(本院ではpro-BNP)が高値です。
 BNPは心不全の診断マーカーとして知られていますが、そのため患者さんは却って過剰に心配して
 しまいます。その点誤解がないように注意しつつ、本院でも心房細動に関してBNPの扱いを再考します。
 例えば心房細動の患者さんで、BNPが増加傾向なら負荷の軽減治療を考察し、心房細動がない高齢者
 でも左房負荷又はBNPを時々測定して、心房細動の予防に繋げる事も一つの戦略だと思っています。




biomarkers.pdf

ehy815_supp.pdf

chadスコアー.pdf












posted by 斎賀一 at 15:24| Comment(1) | 循環器

2019年01月23日

乳幼児に使えるアレグラDSが供給再開

乳幼児に使えるアレグラDSが供給再開
           <業務連絡用>



 抗アレルギー薬のアレグラドライシロップが供給を再開したとの報道が、日経メディカルからありました。
抗ヒスタミン薬の場合は、鼻汁や喀痰を粘稠にすることが心配されていますが、その後開発された抗アレルギー薬には、そのような副作用はあまりないとされています。
眠気に関しても、抗アレルギーの方が抗ヒスタミン薬よりも少ないようです。
 アレグラは特に脳内移行が一番低く、乳幼児には処方しやすいと考えています。効果が乏しい時に倍量服用しても、脳内移行は限定的とのことです。
そのためか、アレグラDSには体重依存性よりも年齢により、かなり幅を持たせた適応量となっています。




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本院では

      ・幼児には   0.3g×2回
      ・幼稚園児   0.6g×2回
      ・小学生は   0.6g×2回 又は アレグラH(30mg/tab)
      ・中学生は   アレグラ(60mg/tab)





アレグラds.pdf

注意を要する名称類似医薬品の組み合わせ.pdf

抗アレルギー薬の脳内移行.pdf












posted by 斎賀一 at 19:37| Comment(0) | 小児科

2019年01月21日

勇者はなぜ、逃げ切れなかったのか

勇者はなぜ、逃げ切れなかったのか

田所 真氏に感謝をこめて



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 毎日新聞(1月19日)より、
「岩手県大槌町旧役場庁舎の本格的な解体工事が1月19日から始まった。
東日本大震災の津波により当時の町長や、多くの職員が犠牲になった建物で、工事差し止めを求める
住民訴訟の訴えが2日前に退けられたばかり。18日に着工予定だったが、強風で延期されていた。」 

テレビで、東日本大震災の報道があるたびに私はチャンネルを変えてしまいます。
自分の弱い負の面があるからと思います。旧役場の解体に賛成する人にも、複雑な思いがあると
察しられます。

前文化センター所長で、現市原市立中央図書館館長補佐の田所真氏の著書、
「勇者はなぜ逃げ切れなかったのか」は示唆に富む内容です。


内容を抜粋してご紹介しますと、


 1) 貝塚とは、縄文時代の人たちが貝殻などのごみを捨てた跡です。従って貝塚を調べれば、
    その近くに遺跡も見つかります。貝塚遺跡と呼ばれています。
    縄文人の中には、狩りから海の幸を求めて山から海の近くに住む人も多くなりました。
    その頃から定住がはじまったと考えられています。
    しかし、貝塚遺跡は海の近くにはなく、其れよりも高台に発見されています。
    岩手県陸前高田市の丘の上で、堂の前貝塚が発見されました。
    海と山のちょうど中間くらいです。東北地方の貝塚遺跡は、今回の震災の大津波が到達した
    高さより少し上にあったというたくさんの事実から、生活の便宜性よりも、命にかかわる掟を
    重視し、「集落は高台につくり、決して海辺には住んではいけない」という事も
    受け継がれていたようです。

 2) 今回の震災の復興工事の際に、多くの貝塚が発見されました。
    工事の遅延に繋がりかねませんが、この貝塚遺跡の調査に多くの住民が参加し、
    優先して先人の教えに耳を傾けたとのことです。

 3) 今から1500年前の群馬県榛名山の大爆発で、降り積もる火山灰に埋もれて命を落とした
    「よろい姿の人」が最近発見されました。なぜ、よろいの勇者が噴火から逃げる事が
    出来なかったか、勇者の自然に対する畏怖と、祈りと、神への許しの心がその理由と
    著者は解釈しています。この事がこの本のタイトルにもなっています。

 4) 今から1100年前の陸奥の国で大地震が起きました。貞観地震と呼ばれています。
    地方の要衝として多賀城は発展しました。しかし、この地震で国府のこの町も当時壊滅的被害
    を受けています。近代となり多賀城の町も防災、減災も施されていましたが、それを上回る
    今回の大震災でした。

 5) 土石流で家族を亡くしたある校長先生の、家族に対する墓石とも思われる碑の話は、
    悲しみを乗り越えて語り継がなくてはという気持ちが感動的です。



私見)
 これ以上内容を記載しますと、著作権の侵害となりますのでこの辺といたします。語り継がなくては
いけない内容です。そのため本著書は、小学生の高学年にも分かりやすいように配慮がされています。
是非購買して家族で読んでください。(くもん出版から出ています。)



追伸)
 3月まで、市原市立中央図書館にて原田琴子(斎賀琴子)の展示会が催されています。
 田所真氏には大変なご尽力をしていただきました。
 誠実に生きるとはどういう事かを、この年になり教えていただいた田所さんに改めて深謝いたします。



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櫟原 原田琴子の手紙.pdf






posted by 斎賀一 at 20:46| Comment(1) | 日記