2018年11月30日

生後2か月以内の乳児の発熱時の評価判断

生後2か月以内の乳児の発熱時の評価判断
 
Risk Stratification of Febrile Infants ≤60 Days Old Without Routine
Lumbar Puncture PEDIATRICS Volume 142, number 6, December 2018
 

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 本院でも、生後3か月以内の乳児が発熱をした場合は、以前は入院設備のある病院に半ば自動的に
紹介していました。この時期には細菌性髄膜炎を鑑別する必要があるからです。
しかし、ワクチン新時代を迎え、肺炎球菌やHibによる侵襲的感染症が劇的に減少しています。
発熱乳児を全て入院させ敗血症と診断する事は、受け入れ側の病院や乳児の保護者においても甚大な負担を要します。
そのため、以前から侵襲的細菌感染症のリスク評価のクライテリアはありましたが、修正したクライテリアを基に今日的な意義を研究した論文が、Pediatricsに掲載されています。
 まず元のクライテリアのPDF(日本版とUPTODATEより)を見てから本論文のRochesterと修正Philadelphiaを比較してください。
 (二つのクライテリアとも髄液検査を行わない点と、修正Philadelphiaでは生後28日以上は低リスクとしています。)


纏めますと

1) 生後60日以内の乳児の発熱では、重症な細菌感染症が10%ある。
   そのリスク評価にRochesterとPhiladelphiaが以前よりある。
   ワクチンによる新時代を迎え、本論文では修正PhiladelphiaとRochesterを用いて侵襲的細菌
   感染症のリスクが低い場合と、逆にリスクが高い場合は髄液検査を推奨していない。

2) 生後60日以内の乳児で侵襲的細菌感染症と診断された135名(87.4%が菌血症だが髄膜炎は無く
   12.6%が髄膜炎を併発)と、コントロール群として249名を二つのクライテリアで比較しました。
    (侵襲的細菌感染症の定義は省略)
   その感度は両クライテリアとも良好で、修正Philadelphiaでは91.9に対してRochesterは81.5
   でしたが特異度は34.5対59.8と修正Philadelphiaの方が低下していました。
   低リスクで大丈夫とは言い切れますが、侵襲的細菌感染症を診断するにはイマイチです。

3) 28週(約1か)での侵襲的細菌感染症は68例ありましたが、両クライテリア共に感度は83.6%
   でした。修正Philadelphiaでは、低リスクとされた人に髄膜炎はありませんでした。
   Rochesterでは低リスクと診断された中に髄膜炎が2例ありました。

4) 髄液検査をしない修正Philadelphiaでは、髄膜炎に対しては全て高リスク群と診断していました。
   菌血症の何人かは低リスクと診断されていました。従って、低リスクと診断され救急外来から帰宅
   しても充分な経過観察が必要です。

5) 1〜3か月の発熱乳児ではたったの0.2%しか髄膜炎を発症していないので、ルーチンに髄液検査を
   する意義は無い。一方侵襲的細菌感染症は全体で2%程度の発症でした。
   例えば生後28週以下の発熱乳児で、修正Philadelphiaで低リスクなら侵襲的細菌感染症は2%、
   髄膜炎は更にその1/6(0.3%)となります。
    (プロカルシトニンに関しては本院で実施しておらず省略)





私見)
 生後1か月以内の発熱乳児はハイリスクとして、2か月以降の場合はこの修正Philadelphiaを活用
 しようと思います。
 ともあれ注意深い経過観察と尿検査は必須です。


 




本論文・クライテリアの訳.pdf

Risk Stratification of Febrile Infants ≤60 Days Old Without Routine Lumbar P.pdf

rochester クライテリア.pdf





下記にネットのアクセスを掲載します。

https://www.mdcalc.com/rochester-criteria-febrile-infants













posted by 斎賀一 at 21:37| Comment(0) | 小児科

2018年11月29日

小児診療における・すべからず集

小児診療における・すべからず集
 
Five Things Physicians and Patients Should Question



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 アメリカの小児科学会のAAPより、小児科医のすべからず集が出ましたので掲載してみます。


1) 侵襲的な細菌感染症では血液、尿やその他の適切な細菌培養をせずに、経験的に抗生剤を処方
   すべきでない。当然例外のケースは除いて。

2) 手術の前後に(周術期)広範スピクトルムの抗生剤の予防投与をすべきでない。
   クリーンになった部位や切開部位の縫合がされる場合、抗生剤の予防投与の際にも充分な注意が
   必要。狭いスペクトルムの抗生剤の予防投与は周術期に認められてはいる。

3) 合併症のない肺炎では、アンピシリン(パセトシン、ワイドシリン)以上の広範スペクトルムの抗生剤
   を使用すべきでない。

4) 新生児のNICでバンコマイシン、カルバペメム等は使用すべきでない。

5) 合併症のない場合は、中心静脈によるカテーテル(IV)での抗生剤投与は長期にならないよう注意し
   経口投与に切り替える事を試みてください。





私見)
 本院での対応に関しては
 ・重症感染症に移行する可能性があれば先ず血液、尿培養を行い抗生剤の投与を計画する。
 ・一般的な肺炎はパセトシンを投与

 子供の目線での診療とは、医療の日進月歩とは別次元の話かもしれません。
 尚、以前にも同様なパンフがありましたので同時に下記に掲載します。





AAP_Infectious-Disease-Choosing-Wisely-List.pdf

10Things_AAAAI-feb2014 (2).pdf












posted by 斎賀一 at 13:49| Comment(1) | 小児科

2018年11月28日

抗アレルギー薬の脳内移行

抗アレルギー薬の脳内移行
              <院内瓦版>



 抗アレルギー薬は鼻炎、蕁麻疹、アレルギー性皮膚炎、感冒、食物アレルギーなど多くの疾患で処方されます。以前の抗ヒスタミン薬ほどの副作用は無く、痰の喀出などにもそれ程影響はないとされています。
 一方でその効果は期待する程でもなく、3/5程度との見方が大方です。
更に鎮静作用を有し脳内移行も心配され、熱性痙攣の乳幼児使用に於いては誘発も懸念されています。
ただ熱性痙攣既往の乳幼児が抗アレルギー薬を服用して、熱性痙攣を誘発したとのエビデンスは無い
ようですが、抗アレルギー薬を敢えてそこまでして処方するメリットは無いとの見解も一般的です。
 しかし実施医家の場合はその必要性が多々あります。
その際は保護者の皆さんに承諾を得て、下記のグラフを参照していただいてます。
取り敢えず本院では、アレジオンを用いる事が多い傾向です。


下記のPDFを参照してください。






抗アレルギー薬の脳内移行 (2).pdf










posted by 斎賀一 at 19:02| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー