2018年10月03日

慢性肝疾患とアルコール

慢性肝疾患とアルコール
 
Alcohol Use in Patients with Chronic Liver Disease
N Engl J Med 2018;379:1251-61




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 雑誌NEJMに、慢性肝疾患におけるアルコール摂取との関係が総説として掲載されています。
慢性の肝疾患を患っている人はアルコールを控える事が当然と認識していますが、メジャーな雑誌に載りますと、患者さんに対する説得力も増します。 



纏めてみますと

1) まず飯島の組織病理アトラスによりますと、アルコール性肝障害は下記の所見が指摘されています。
    ・小葉中心性の硝子様壊死・また、それに続く小葉中心性線維化・胆汁鬱滞
    ・グリソン鞘中心性線維化・肝細胞の脂肪空砲 ・mallory変性

   (特徴は小葉中心性と周辺性の両方に線維化が起こり、やがてブリッジングが生じると理解して
    います。)
   本論文では、上記の所見が一人の人で混在して認められるとしています。

2) 肝障害の程度は一日平均のアルコール摂取量にも関係がありますが、大酒飲も独立した危険因子
   です。時には大酒も好いかとはいかない様です。

3) アルコール自体の肝毒性もありますが、アルコール摂取により腸内グラム陰性細菌が増殖して、
   endotoxin の増加となり、これが肝のクッパー細胞(貪食細胞)を活性化して線維化が進展する。

4) 残念ながらC型肝炎患者は一般の人と比べて飲酒の量が多く、時に8倍にもなるとのデータがあり
   ます。
   C型肝炎ではアルコールにより酸化ストレスが増加するばかりでなく、C型肝炎ウイルスの複製も促進
   してしまう。
   DAA(最近の経口薬)の時代でも、アルコールは大丈夫とは言えない。

5) マウスの実験では、B型肝炎ウイルスの複製をアルコールは増長させる。
   更にB型肝炎による肝硬変患者では、アルコールにより肝細胞癌の発生が増加する。

6) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肥満、メタボリック症候群で発生しますが、アルコール
   摂取で頻度は更に多くなり増悪もします。
   ワインが良いとのデータもありますが、一般的にはアルコール摂取によりNAFLDの線維化は進展
   してしまう。

7) 慢性肝疾患はアルコールにより急性増悪をするが、比較的回復は良い。
   (acute-on-chronic liver failure)しかし長期での転帰は悪い。
   基本的には禁酒である。

8) アルコールからの離脱療法には、ベンゾジアゼピン系が有効
   特に短期作用型が推奨される。中でもワイパックスは腎代謝であり有効と思われる。
     ※下記のグラフを参照





  
私見)
 肝疾患とアルコール性肝疾患は、独立した疾患ではなく相互に作用して増悪する傾向があります。
 本院に来院する患者さんの多くは、酒を飲み続けたいために治療を受けに来ているようです。 
 「酒を続けると病状が悪化しますよ。」と説得したら藪医者の誹りを受けそうです。





肝疾患とトランキライザー.pdf







  
posted by 斎賀一 at 19:22| Comment(1) | 肝臓・肝炎