2018年09月03日

少量アスピリンは糖尿病患者の心血管疾患を予防できるか? ASCEND研究

少量アスピリンは糖尿病患者の心血管疾患を予防できるか? ASCEND研究
 
Effects of Aspirin for Primary Prevention
in Persons with Diabetes Mellitus
This article was published on
August 26,2018, at NEJM.org



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 糖尿病患者においては、心血管疾患のリスクは2~3倍あると言われています。
その予防のために少量アスピリンがありますが、一方で少量アスピリンの抗血小板作用は、糖尿病その
ものにより減弱されるとの推測もあります。
 以前の研究で有名なATC研究後に、4つのアスピリンに関する研究報告があるとの事ですが、何れも糖尿病患者に限定した研究ではない様です。
 今回雑誌NEJMに、心血管疾患の既往歴のない糖尿病患者に対して、少量アスピリン(100mg)を服用した群と服用しないコントロール群で比較検討した論文が掲載されていました。つまり一次予防研究です。(心血管疾患の既往のない人が対象です。二次予防とは、疾患を起こした人の再発予防のための研究
です。)


纏めてみますと

1) 糖尿病患者で心血管疾患の既往の無い15,480名を登録して7.4年間追跡調査しました。
   主要転帰は心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、何らかの血管疾患による死亡です。
   一方、主要副作用は脳出血、消化管出血、視力障害を起こすほどの眼底出血、その他の重大な
   出血としています。

2) 重大な心血管疾患の発生は少量アスピリン群では658名で、8.5%に対してコントロール群では
   743名で9.6%でした。
   逆に主要副作用転帰では少量アスピリン群で314名の4.1%に対してコントロール群では245名
   の3.2%でした。

3) 結論的には、少量アスピリン群の効果は12%の心血管疾患のイベント減少でした。
   これを患者数で勘案すると、100名の患者に少量アスピリンを投与すると1人の心血管疾患を予防
   できるが、1人に重大な出血(殆どが消化管出血)が発生します。
   つまり利害が相殺されてしまうのです。
   下記のPDFをご参照ください。

4) 有効率は以前の研究と比較して同じであるが、今回の研究ではATCを含めた以前の研究とは異な
   り、多くの登録者が降圧剤やスタチン系の治療薬を服用しており、本研究は少量アスピリン単独の
   効果と見られています。
   更に本研究が終了する時点で、PPI(胃酸抑制薬で、少量アスピリンを服用する際には併用を推奨
   されています。)の服用率は1/4でした。




私見)
 胃潰瘍予防のためのPPIを服用していたら別の結果が出たかもしれませんが、糖尿病患者ですら少量
 アスピリンは一次予防にはそれ程の利点は無いようです。しかし二次予防に関しては有効との論文が
 多くありますので注意してください。
 糖尿病患者さんにおいては、ライフスタイルを含めた総合的な治療戦略が転ばぬ先の杖です。






本論文より.pdf










  
posted by 斎賀一 at 20:28| Comment(0) | 循環器