2018年09月25日

アスピリン喘息

アスピリン喘息
 
Aspirin-Exacerbated Respiratory Disease
    n engl j med 379;11 nejm.org September 13, 2018



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 アスピリンに限らず、一般的な鎮痛解熱剤(NSAIDs)を服用すると、喘息を誘発したり増悪傾向になる事が以前より知られています。しかも鼻茸のある人では高頻度です。
 一般的なNSAIDsはCOX-1とCOX-2の両方を阻害します。選択的COX-2阻害薬としてはセレコックスがあります。 (COXに関しては、下記のやさしい薬理学のPDFを参照)
雑誌NEJMにアスピリン喘息の総説が載っていました。私にとって新知見が多く、ブログで纏めてみました。
その前に、アスピリン喘息の機序は煩雑のため、書籍より引用しましたので事前に参考にして下さい。
アメリカではアスピリン喘息をAERDとして、一般的に認知されています。



纏めますと

1) AERDは後天的疾患で如何なる年齢でも発症しますが、多くは30歳代です。
   50%が上気道の症状です。

2) AERDは殆ど全てのアルコール摂取で症状が悪化するが、特にビールとワインの頻度が多い。
   アルコールの摂取を超えた何かがあるかもしれない。

3) 鼻茸の外科的処置をしてもAERDは直ぐに再発する。

4) AERDでは喘息と副鼻腔炎が重症化する場合があり、治療管理で困難なケースがある。
   その際は、気道と鼻粘膜のリモデリング(基底膜の構造変化)が生じている。

5) 家族性や新生児では稀である。

6) 診断は
   ・24時間蓄尿でのロイコトルエンE4(LTE4)の測定が、診断価値は高い。
   ・アスピリンの服用負荷テストと呼吸機能検査(チャレンジテスト)が一般的に採用されている。
    (しかし、論者も指摘していますが専門医のみが行う事としています。)
   ・既往歴のみでの診断では、80%の正解率

7) 治療は原則的に喘息と同じ
   難治例では、抗ロイコトルエン薬(オノン、シングレア、キプレス)や経口ステロイドを追加する。

8) アスピリン減感作療法
   最初はアスピリン40.5mgより開始して、1〜3日毎に増量する。
   目標は325mg (本院では勿論、実施しません。)

9) 機序については、下記の「本論文」と「アスピリン喘息の薬理」のPDFをご参照ください。

   尚、追加事項として
   ・アスピリンは48時間以上COX-1を阻害して、新しい酵素が産生されるまで作用する。
   ・NSAIDsは服用後、腸管で吸収され30~90分で全身に循環される。
   ・COX-2阻害薬のセレコックスは、AERDを起こしにくい。
    それはCOX-2阻害薬の分子が大きいので、より小さいCOX-1チャンネルにはフィットしないため
    である。





私見)
 本院ではAERDを診断するには問診しかありません。
 十分に注意するため、過剰診断も仕方ないかもしれません。
 その際は、比較的影響の少ないアセトアミノフェン(カロナール)かセレコックスを処方します。




 【参照書籍】
  いちばんやさしい薬理学 : 成美堂出版





いちばんやさしい薬理学.pdf

本論文グラフより.pdf










posted by 斎賀一 at 20:22| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2018年09月21日

滲出性中耳炎に経口ステロイド剤は効果なし?

滲出性中耳炎に経口ステロイド剤は効果なし?
 
Oral steroids for resolution of otitis media
with effusion in children (OSTRICH)



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 滲出性の中耳炎は、小児において聴力障害に繋がる懸念があります。
今までの研究では抗生剤、局所ステロイド点耳、ムコダイン、ムコソルバンは無効との報告です。
耳管チューブの外科的処置が推奨されていますが、経口ステロイドの服用も安価で安全な治療として広く採用されています。
 しかし今までのところ、はっきりとした比較試験がなかったようです。

 今回雑誌LANCETより研究報告(study)が出ています。



纏めますと

1) 少なくとも3か月間、滲出性中耳炎を患って聴力障害を両側に伴っている2〜8歳の小児に対して
   経口ステロイド服用群とプラセーボ群に振り分けて、5週間後に聴力検査をしています。
   調査は2014~2016年で1,018名がスクリーニングされ、その中で389名が登録されました。
   更にその中で200名が経口ステロイド服用群、189名がコントロール群に振り分けられました。

2) 主要転帰としての聴力の十分な回復は、5週間で経口ステロイド服用群では73名(40%)
   プラセーボ群で59名(33%)でした。

3) 両群とも5週間、6カ月、1年と経過を見ていくと、高頻度で聴力の改善が見られています。
    (今までの研究では自然治癒は3か月で28%、6カ月で42%と言われています。)
   本研究の結論では、両群で明白な差はなかった。
   経口ステロイド服用では、14人中1人に効果があったとしか言えない。
   つまり多くの患児が自然治癒する結果でした。
   中耳炎の症状に関しては1年経過観察でみますと、ステロイド服用群で68%、プラセーボ群で61%
   継続していました。

4) ガイドラインでも3か月までは経過観察でも良いが(watchful waiting)、3カ月しても聴力障害が
   あったり言葉の遅延が認められたら、専門医へ紹介すべきとしています。





私見)
 経口ステロイドは滲出性中耳炎にとって有効な治療選択ですが、本論文の筆者も述べていますが、その
 効果は限定的で14人中1人程度と認識すべきとしています。有効な治療に関しては、今後の課題として
 います。
 鼓膜チューブか経口ステロイドか、門外漢の私には判断が出来ませんが、その効果も限定的である事を
 説明し、コンセンサスを得る事も大事なようです。






中耳炎 ステロイド.pdf

中耳炎.pdf







posted by 斎賀一 at 20:52| Comment(2) | 小児科

2018年09月19日

治療抵抗性高血圧症のガイドライン

治療抵抗性高血圧症のガイドライン

 Resistant Hypertension: Detection, Evaluation, and Management




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 アメリカのAHAから、治療抵抗性高血圧症(aTRH)に関するガイドラインが出ています。
2017年の高血圧ガイドラインに沿った内容で、今回はaTRHに絞って発表しています。
心血管疾患の10年リスクが10%以上の場合は、降圧目標を130/80以下としていますが、それに呼応
してaTRHも定義されています。


纏めてみますと

1) 定 義
   3種類の異なる降圧剤を使用しても、目標血圧に到達できない場合を言う。
   aTRHは心血管疾患のリスクが高まるばかりでなく、多剤併用となるので副作用も増加する。
   そのため適切な診断と治療が求められる。
   aTRHとは、下記の要因が一つでもあれば除外される。
    ・薬剤の容量が不十分
    ・きちんと服用していない (アドヘランス)
    ・自宅での血圧測定がされていない。
   白衣高血圧は原則的にaTRHに含めない。
   (白衣高血圧は、コントロールされた高血圧とリスクが同じであるため)
   実地医家の場合で15~18%がaTRHである。

2) 予 後
   aTRHは腎疾患を32%悪化、虚血性心疾患は24%、心不全は46%
   脳梗塞は14%、死亡率は6%増加しています。
   全体として、aTRHでは心血管疾患のリスクが2倍増加しています。
   また薬剤の副作用も増加してしまいます。

3) 血圧測定の適正化
   排尿後、静かな部屋で足を組まずに5分間座ってから測定する。
   カフは心臓の高さに保つ。
   1分間隔で2回測定する。

4) 白衣高血圧
   家庭内自動血圧(ABPM)は予後の判定因子に関係するが、外来診療での血圧(白衣高血圧)は
   ABPMが測定されていなければ、心血管疾患との関連性において予測因子としては低い。との
   ブラジルからの報告もある。
   外来で自動測定器を用いて静かな部屋で3~6回測定する事により、白衣高血圧を除外できる。
    (本院でも検討したいと思います。)

5) ライフスタイル
    ・肥満
    ・食塩
    ・アルコール
    ・運動
    ・薬剤関係
    下記のPDF参照

6) 睡眠障害と偽性褐色細胞腫 (psudopheochromocytoma)
   (本ガイドラインのメインテーマの様です)
   1999年より偽性褐色細胞腫の用語が提唱されています。
   急な血圧の上昇を呈して本来の褐色細胞腫を否定でき、且つパニック障害や心理的ストレスもない
   事を想定しています。
   抗不安薬、カウンセリング、βブロッカーが奏功します。
   この概念は主に閉塞性睡眠時無呼吸発作(OSA)とは関係無く、様々な睡眠障害が含まれます。
   交感神経とレニンアンギオテンシン系の賦活が主たる病態のようです。
   これが睡眠時の高血圧状態を誘引し、血圧のコントロール不良に至ります。
   適切な睡眠時間は7~8時間とされています。
   特に60歳以下では5時間以下、60歳以上では9時間以上がこの偽性褐色細胞腫に関与して
   きます。
   治療としては、降圧利尿薬はこの場合は不適で、ARBが適しているとの事です。

7) 閉塞性睡眠時無呼吸発作 (OSA)

8) 二次性高血圧症 (省略)


  



私見)
 治療に関しては以前のブログをご参照ください。 ( “高血圧” で検索)
 外来での複数回の自動血圧測定は有効だと思いました。
 睡眠障害も治療抵抗性の場合にアプローチすべき課題と認識しましたので、職員の皆さんシステム作り
 に協力してください。
 




治療抵抗性高血圧 aha.pdf


















posted by 斎賀一 at 19:07| Comment(1) | 循環器