2018年06月22日

扁桃腺摘出術後の長期予後

扁桃腺摘出術後の長期予後
 
Association of Long-Term Risk of Respiratory, Allergic,and
Infectious Diseases With Removal of Adenoids and Tonsils in Childhood
JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. doi:10.1001/jamaoto.2018.0614
Published online June 7, 2018.



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 扁桃腺摘出後の短期的なリスクや予後は報告がありますが、長期的な予後に関してはあまりないよう
です。
今回、雑誌JAMAより論文が出ましたので掲載します。


纏めますと

1) 1979~1999年にかけてデンマークで生まれた1,189,061人を対象に、10歳までに扁桃腺摘出を
   行った人を30歳まで経過観察しました。
   内訳は、扁桃腺摘出が11,830人、アデノイド摘出が17,460人、扁桃腺・アデノイド両方摘出は
   31,377人でした。

2) 一般的に扁桃腺摘出は、繰り返す扁桃腺炎や中耳炎のために行います。
   扁桃腺は経時的に萎縮するので、摘出をしても問題ないとの観点から扁桃腺摘出が行われていま
   した。しかし若年層での摘出には、生涯における免疫力の低下も懸念されます。
   そこで、28疾患についてそれぞれ相対性リスク、絶対的リスク、NNTで評価しました。

3) 結論的には、扁桃腺摘出により上気道感染症は3倍の危険率でした。
   上気道感染症とは、喘息、インフルエンザ、肺炎、COPDの類も含まれます。
   絶対性リスクも18.61%増加していました。
   アデノイド摘出に関してはCOPDが2倍の危険率、上気道感染症と結膜炎も2倍に近い危険率
   でした。
   アデノイド及び扁桃腺摘出では、中耳炎や副鼻腔炎が4〜5倍の危険率でした。
   結果的には、扁桃腺摘出の効果は短期的でしかなく、長期予後に関しては小児の免疫機能を司る
   扁桃腺、アデノイドを摘出してしまうデメリットが大きいと指摘しています。
  
  詳しい結果は下記のPDFの表をご参照ください。





私見)
 ある論評では、この結果はバイアスがかなりありそうだとの指摘です。
 更に「経過において喫煙、アルコール摂取などの因子は考慮されておらず、本論文は観察研究である。
  (観察研究ではデータの仮説に対しての提唱には適していますが、実証には適していないとされて
   います。)
 しかも、現代では手術の適応が再発性の扁桃腺炎ではなく、閉塞性睡眠時無呼吸症候群である。
 保護者は、この結果から扁桃腺摘出を躊躇してしまうかもしれない。このような論文もある、との参考
 程度にするには良いかもしれないが。」としています。

 私のような実地医家にとっては、このような論文はかなりの価値です。
 本論文の筆者が、最初から色眼鏡で扁桃腺摘出を考えていたとしても...。




扁桃腺摘出の本論文.pdf

リスク.pdf









posted by 斎賀一 at 20:00| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー