2018年05月31日

タミフルの小児における効果と安全性

タミフルの小児における効果と安全性
 
Efficacy and Safety of Oseltamivir in Children:
Systematic Review and Individual Patient Data
Meta-analysis of Randomized Controlled Trials



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 インフルエンザ治療薬のタミフルに関しては、特に乳幼児から小児にかけて論争があります。
2009年のパンデミック以来、米国では生後2週間の乳児でのタミフルの適応が許可されています。
また成人では、タミフル服用により入院率の減少が証明されています。しかし乳幼児に関してはその
効果は顕著ではありません。タミフルに対して積極的な私にとって強い味方の論文が、今回オックス
フォードの Clinical Infectious Diseases から出ましたので掲載してみます。

 対象は18歳以下です。
97の研究論文を検索して、結局5件の論文研究を選び抜いて解析しています。
統計学的知識がないので十分に理解が出来ませんが、その点はご了承ください。
(取りあえず、ランダマイズ化するにあたって調査を追行出来たグループを解析したのが ITT で、その
 中でもインフルエンザの有無を確診出来たグループのみを解析したのが ITTI のようです。更に
 ハザード比ではなく、より正確な RMST をもって比較しています??) 


纏めますと

1) 一度でもタミフルの治療を開始し、最後まで経過観察ができた2,561名を ITT として解析し、その
   中でインフルエンザウイルスの有無が確診出来たのが1,598名で ITTI として解析しています。

2) ITTI の解析で病態期間の短縮が、タミフル群で17.6時間ありました。
   以前の成人での報告では25時間の短縮と報告されていますが、小児ではそれほどでないとされて
   いましたし本論文の ITT でもあまり効果が無い結果でしたが、ITTI 解析では明らかな短縮効果
   が認められました。  
   更に喘息の既往が無い研究ではその効果は顕著で、タミフル群で29.9 時間の短縮でした。
   この理由ははっきりはしませんが、喘息があるとその症状のために有病期間が長くカウントされる
   ため、としています。
   プラセボ群との比較で下気道感染症(肺炎合併なで)の差は顕著ではありませんでした。
   しかし喘息患児を有するスタディを見ますと、タミフル群に効果ありとの結果です。
   その推測と併せて下記のPDFのグラフを参照ください。

3) 急性中耳炎の合併のリスクは、タミフル群で34%減少でした。
   本論文ではこの意義は大きく、小児のその後の聴覚に対する影響を考えると、重要としています。

4) 副作用として、嘔吐はタミフル群で、コントロール群より多くありましたが、吐き気は同じでしたし重大な
   副作用はありませんでした。
   (薬剤を服用する事による嘔吐はあるかもしれませんが、服用により吐き気が続くことはないと理解
    しました。)

5) 以上より、多くのガイドラインに沿って小児はワクチンと相乗して、タミフルの服用を推奨するとして
   います。

6) リスク比に関しては下記のPDFを参照ください。





私見)
 一部の見解でタミフルの逆風を感じています。
 今シーズンのインフルエンザ流行期に東京の医療機関を受診し、その後発熱が続くとの事で、地元の
 本院を受診した方がいました。東京の医師には「タミフルは効果が曖昧だし副作用もあるので、本院では
 処方しない。しないからインフルエンザの検査もしない。そもそもインフルエンザは自然に治る病気だ。」
 と言われたとの事です。
 ・・・ さすが東京は最先端を行くと感心しました。

 私は思うんです。人生においてはぶれない主義や哲学が必要だと。
 しかし、医療においてはなるべく個人的感情の主義・主張は避けたいものだと思っています。
 アットホームな町医者を目指す私としましては、常に冷徹な判断をする事はなかなか難しい事です。





インフ文献.pdf














posted by 斎賀一 at 13:54| Comment(2) | インフルエンザ

2018年05月29日

消化管出血後のDOAC再開の指針

消化管出血後のDOAC再開の指針

 Rebleeding vs Thromboembolism After Hospitalization for
Gastrointestinal Bleeding in Patients on Direct Oral Anticoagulants



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 抗凝固薬のDOAC服用者が消化管出血した場合には、迅速にDOACを中止して出血の対応をしなくてはなりませんが、その後に基礎疾患(心血管疾患)の悪化も心配されますので、何時DOAC服用の再開をしたらよいかは論文があまり無かったとのことです。


今回要約のみでのご紹介ですが、以下に纏めてみました。

1) 消化管出血で入院し、DOACを服用していた約1,300人が対象です。

2) 30日以内でのDOAC服用再開では、再出血の危険もその後90日以内の血栓症のリスクも増加して
   いませんでした。

3) 静脈血栓症においては、危険率3.3と増加していました。
   DOACと抗血小板薬のプラビックス、パナルジンを併用で服用している場合では、出血の危険率が
   3.1と高かったようです。
   DOACの中でもイグザレルトは、他のDOACよりも出血の危険率が高いようです。





私見)
 論評では30日以内の早期での再開は、基礎疾患の増悪を鑑みて有効とのコメントです。
 但し、抗血小板薬の併用やイグザレルトの場合は一層の管理が必要な様です。





noac 出血.pdf




         DOAC.PNG















posted by 斎賀一 at 19:36| Comment(1) | 消化器・PPI

2018年05月28日

PPI(胃酸分泌抑制薬)の休薬の方法

PPI(胃酸分泌抑制薬)の休薬の方法
 
Strategies for Effective Discontinuation of Proton Pump Inhibitors



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 PPIは胃酸分泌抑制薬では一番強力です。
長期に服用する事による問題点が以前より指摘されています。以前の私のブログをご参照ください。
大まかに言ってそれ程心配はないとの事ですが、実地医家にとっては長期使用には注意が必要と認識しています。
 今回の論文ではその休薬の方法が検討されています。


纏めますと

1) 米国でも外来の35.4%にPPIが処方されています。
   バレット食道(胃酸が食道に逆流するために、扁平上皮の食道が円柱上皮に化生して対応してい
   る。)、症状のある逆流性食道炎、抗血小板薬の服用、NOAC(抗凝固薬)の服用などでは、長期の
   服用は広く認められていますが、症状のない逆流性食道炎や機能性ディペプジアなどでは、なるべく
   減量や休薬を勧めています。

2) リバウンドを避ける意味で、漸減方法は2週間から1か月かける事を推奨されています。しかし1年後
   の調査で休薬出来たのは、症状のある逆流性食道炎の場合で21%、症状の無い逆流性食道炎で
   48%でした。
   これはPPIを服用する事により、二次的にガストリンが高値となり、この状態が長期にわたり継続して
   いるので漸減には時間が掛かるとしています。

3) 代替薬として、H2遮断薬や3環系抗うつ薬も推奨しています。
   漸減する方法としては隔日服用かon-demand(症状がある時だけ服用)も推奨しています。
   (本院では原則隔日服用で、症状が出現した時にon-demandとしています。)





私見)
 ガストリンに関しては下記のPDFを参照ください。





 
1ppi 中止 (1).pdf

2ガスロリン.pdf

3PPI.pdf

4H2ブロッカー.pdf









 

posted by 斎賀一 at 20:13| Comment(1) | 小児科