2018年03月17日

前立腺癌の診断に直腸指診は無効?

前立腺癌の診断に直腸指診は無効?

Digital Rectal Examination for Prostate Cancer Screening
in Primary Care: A Systematic Review and Meta-Analysis



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 前立腺癌の検診にPSAが導入されてから、私も直腸指診を忘れていました。
今回の論文では、スクリーニングとして直腸指診は無効で、却って害になるとの報告です。
ほっとしましたが、良く考えるとそうとは言えない感じもいたします。


簡単に纏めてみますと

1) 直腸指診は過剰診断と過剰治療(生検も含めて)に繋がる。

2) はっきりした死亡率の改善には至らない。つまり治療可能な前立腺癌の発見には効果が無く、進行癌
   の発見が主になっている。

3) 直腸指診の特異度は0.59、感度は0.51

4) はっきりしたエビデンスがないので、直腸指診単独やPSAとのコンビネーションの両方ともスクリー
   ニングに推奨しない。



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   “当たるも八卦、当たらぬも八卦” でしょうか

しかし論文中にも記載されていますが、直腸指診とPSAを組み合わせた場合には、ハッキリした効果は
無いにしても捨てがたいデータを示しています。
その点をUPTODATEから調べ直して、こちらも纏めてみました。


1) 長い間直腸指診は行われてきたが、どの年齢層でも死亡率の低下には貢献していない。

2) 前立腺の後壁と側壁は直腸指診で診断できるが、それ以外の部位でも癌は発生する。
   更に直腸指診だけでは、進行癌の発見は出来るがステージTの発見は出来ない。

3) 直腸指診の診断確率は5~30%で、メタ解析では28%

4) 直腸指診とPSAとのコンビネーションを調べると
   ・PSAが正常で、直腸指診が陽性の場合の診断確率は 10%、
    ・直腸指診が陰性で、PSAが異常値での診断確率は 24%、
   ・つまり、PSAが1.0以下での直腸指診の診断は劣るが、3.0~4.0の範囲では診断は高まる。

5) 以上より、各ガイドラインは直腸指診のスクリーニングでの実施は、PSAとのコンビネーションを
   含めて推奨していない。





私見)
 何やら後ろ髪を引かれる思いです。
 私はスクリーニングの世界で生活していませんし、蓮池の泥の中で仕事をしている身では、PSAが 
 4以上では経時的観察も大事ですが、直腸指診とエコーの所見を見定めなくてはいけない様な気が
 しました。

    




前立腺癌 指診 文献.pdf

pubmed.pdf









posted by 斎賀一 at 14:29| Comment(1) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2018年03月15日

原発性シェーグレン症候群

原発性シェーグレン症候群

Primary Sjögren’s Syndrome
n engl j med 378;10 nejm.org March 8, 2018



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 ドライマウスやドライアイは現代病の感じすらあります。
しかし、稀ながら重大な疾病が隠れている事もあり注意が必要です。
代表的疾患のシェーグレン症候群がNEJMに、総説が症例報告として掲載されていましたので
纏めてみました。


 1) 男女比は1:9、発症のピークは50歳代、
    主な症状はドライアイ、ドライマウス、関節痛、倦怠感である。
    80%が上記の症状を全て呈する。そのためQOLの低下や仕事の生産性の低下をもたらす。

 2) 二次性シェーグレン症候群は関節リュウマチ、膠原病によるものである。

 3) ドライマウス、ドライアイ、倦怠感、関節痛は他の疾患(線維筋痛症など)でも多く認められるが、
    疾患の頻度としては原発性シェーグレン症候群は稀である。

 4) 全身症状は30~40%に出現する。
    基本的病態は、外分泌線を越えてリンパ球が浸潤するためである。
    その結果、間質性腎炎、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、閉塞性細気管支炎を起こす。
    又、Bリンパ球の活性化により免疫複合体の沈着で糸球体腎炎、間質性肺臓炎、末梢性神経炎
    が起る。SLEの腎炎と異なりシェーグレン症候群は蛋白尿の程度は軽い。


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 5) 動物実験では、ウイルスの刺激により粘膜上皮の活性が起るとされている。

 6) ドライマウス、ドライアイ、倦怠感、関節痛が診断上重要だが、
    時に合併症により、シェーグレン症候群の診断に結びつくことがある。

 7) 抗SSA抗体は2/3に認められる。リウマチ因子は1/2。
    抗SSA抗体が陰性で、疑いが払拭できない時は唾液腺の生検が必要になる。

 8) 唾液腺のエコーも有用である。


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 9) リュウマチ因子の陽性、補体C4の低下、耳下腺の繰り返す腫脹は、シェーグレン症候群の
    悪性リンパ腫の併発の予測因子となる。




私見)
 繰り返す耳下腺の腫脹、寝汗、倦怠感は実地医家ではありふれた症状です。
 注意深い診察が求められそうです。
 図をPDF化しました。
 関連文献を下記に掲載します。




シェーグレン症候群.pdf


NEJMicm1210527.pdf


EULAR Sjögren’s syndrome disease.pdf







posted by 斎賀一 at 14:10| Comment(0) | その他

2018年03月13日

ACPの糖尿病ガイダンスに早くも反論

ACPの糖尿病ガイダンスに早くも反論

American Diabetes Associationレジスタードマーク Deeply Concerned About New
Guidance from American College of Physicians Regarding
Blood Glucose Targets for People with Type 2 Diabetes



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 先日アメリカ内科学会(ACP)より、HbA1cに関するガイダンスをブログして喜んでいましたが、早くも
糖尿病専門学会のADAとAACEから反論がでています。
本レポートよりもmedscapeからの記事の方が、開けっぴろげで分かりやすいのでそれをご紹介します。
若干意訳してしまいましたがご了承ください。


1) ACPからのガイダンスはエビデンスに基づいているとの事だが、新しい血糖降下剤に関しての研究を
   十分に取り入れていない。
   これだと実地医家にとって、却って混乱を招いてします。
   特にA1cに関しては、それぞれのガイドラインに統一性が求められるのは当然である。
   (一般的にADAは7.0%以下、AACEは6.5%以下を推奨)



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2) ADAとAACEとは同一の見解であり、新しい薬剤に関しては低血糖のリスクが極めて低いとの認識を
   持っている。次にACPのガイダンスに関してそれぞれ反論しています。

3) ACPのガイダンスの1に関して
    これに関しては同じ見解である。

4) ACPのガイダンスの2に関して
   ・ADAの反論
    エビデンスに基づきA1cは7%以下を推奨している。
    多くの糖尿病患者は進行性の血管疾患は無く重症な低血糖の既往もなく寿命が短いわけでも
    ない。
    よって7%以下を目標にするのが論理的である。
   ・AACEの反論
    ACPの論文を見てビックリして腰を抜かしてしまった。これでは10年前に遡った論理だ。
    多くの患者は6.5%以下を目標にすべきである。
   ・それに対してのACPの反反論
    7%以下にしても細動脈疾患の予防になると言うエビデンスは極少量である。
    利点よりリスクが大きい。

5) ACPのガイダンスの3に関して
   ・ADAの反論
    非積極的治療の利点は低血糖を防ぐことで、そのために治療を簡略化する必要があるが非積極
    的治療自体が目的ではない。
    追加療法(add-on療法)のみがA1cを6.5%以下にすることができる。
   ・AACEの反論
    A1cの目標に近づいているのに治療を軽減するとは何とも解せない。
    現在では週1回のGLP-1とメトグルコ及びSGLT-2を併用するのがスタンダードであり、このレジメ
    は目標を達成しやすく低血糖も起こさない。
    他のレジメとしては、長時間作用型インスリンやSGLT-2とGLP-1の併用も効果はあり、低血糖の
    副作用も極めて少ない。

6) ACPのガイダンスの4に関して
   ・ADAの反論
    80歳以上、施設の入居者、慢性疾患合併者、寿命が限られている人をひと括りにするのはおか
    しい。寿命とは平均値であり、個別的な判断が大事である。
   ・AACEの反論
    合併症のある人、担癌患者、高齢者は低血糖の有無や多飲多尿などに注意が必要で、血糖を
    100~250mg/dlに調整する事が先決である。






私見)
 なんだか私的には判官びいきのせいか、ACPの方に加勢したくなります。
 (今流行の言い方を借りれば、ADAとAACEは100%伴にあるようです。)
 ガイドラインが色々ある事は良い事です。
 目の前の患者さんの状況により、様々なガイドラインの中から私に合ったのを選べばよい事で、
 それが本当の意味での、私を含めた個別化ではないかと、うそぶきます。
 (取り敢えずガイドラインに沿って治療すれば、独りよがりの誹りは逃れそうです。)
 尚、ADAとAACEのガイドラインは私のブログからご参照ください。
 見ていない方は下記のPDFをご参照ください。




American Diabetes Associationレジスタードマーク Deeply Concerned About New Guida (2).pdf

ADAガイドライン.pdf

AACEガイドライン.pdf













posted by 斎賀一 at 21:12| Comment(1) | 糖尿病