2018年02月19日

抗血栓薬と内視鏡;アジア発のガイドライン

抗血栓薬と内視鏡;アジア発のガイドライン

Management of patients on antithrombotic agents undergoing
                emergency and elective endoscopy:
                joint Asian Pacific Association of Gastroenterology (APAGE)
                and Asian Pacific Society for Digestive Endoscopy (APSDE)
                 practice guidelines




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 日本の学者を含めたアジア発の抗血栓薬(抗血小板薬と抗凝固薬)を服用している場合の、内視鏡に対するガイドラインがbmjで発表になりました。
アメリカやヨーロッパからガイドラインが既に発表になっていますが、日本を含めてアジアでは消化器(胃と大腸)の癌の罹患率が高く、また内視鏡手技も目まぐるしい進歩があり、アジア独自のガイドラインが必要との観点から作成されたようです。
 (内視鏡の技術に関して、日本をはじめアジアの専門家の自負が感じられるガイドラインです。)

最初の会合は2016年9月に日本で開催され、専門家の投票でA+(強く支持)と、A(支持)が80%以上の時に推奨としています。
内視鏡検査を低リスク、高リスク、超高リスクの3段階に分け(海外では2段階)また患者サイドも血栓症発症のリスクを層別化しています。  (詳しくは下記のPDFを参照)


まずサマリーより記載してみます。

A.低リスク内視鏡処置
 ・単独の抗血小板薬服用の場合  :  服用の中止を指示しない。
 ・2剤の抗血小板薬服用の場合  :  服用の中止を指示しない。   
 ・ワーファリンを服用の場合   :   服用の中止を指示しない。
   
  INRは治療域を保つ事、またINRが3.5以上の場合は内視鏡処置を延期。

 ・DOACsを服用の場合   :  服用の割愛(omit)を提案(suggest)しない。

   
B.高〜超高リスク内視鏡処置
 ・単独の抗血小板薬服用の場合 : 超高リスクでなければ少量アスピリンの中止を指示しない。
                        プラビックスは5日前に中止しておく。
                        適切な止血の後にプラビックスは再開する。
  
 ・2剤の抗血小板薬服用の場合
  超高リスクの場合は2剤を中止するが、一般的にプラビックスは中止して、少量アスピリンは継続する。
  プラビックスの再開は適切な止血の後にする。

 ・ワーファリン服用の場合
  5日前より中止
  血栓症の低リスクの場合は、INRが2.0以下で可能
  血栓症が高リスクの場合は、INRを2.0以下にして、ヘパリンへのbridgingを行って実施する。
  血栓症が高リスクの場合は、実施後にINRが治療域になるまでヘパリンのBridging療法を行う。

 ・DOAC
  少なくとも実施の48時間前に中止
  Bridging療法は推奨しない。
  適切な止血後にDOACの再開を勧奨


次にそれぞれのagent(薬剤療法)について解説しています。

 A.)単独の抗血小板療法
   アジアでは少量アスピリンが頻用されている。
   二次予防に関しては効果が証明されているが、一次予防に関しては未だ明白でない。
   アスピリンの効果は5~7日継続するので、緊急時では遅れる事無く内視鏡の実施のベネフィットを
   優先する。 (この点が欧米のガイドラインとは異なるとの事)

 B.)2剤の抗血小板薬
   循環器の専門家とのコンサルトを要する。特に急性冠症候群の6カ月以内の場合。
   一般的に本ガイドラインは両者の中止を勧めていない。
   両者を中止した場合にステント再血栓化は7日以内に発生するが、プラビックスのみの中断では
   122日(アスピリンのみ服用)に発生と遅延できる。
   またPPIとプラビックス併用の場合に、アジア人では相互作用が多いとの報告もある。
   以上の理由によって、本ガイドラインはアスピリンの継続服用を勧めている。

 C.)ワーファリン
   INRと消化管出血との相関関係は十分なエビデンスはない。
   よって本ガイドラインでは、緊急時の内視鏡処置に関してはINRに関係なく、遅れることなく実施す
   べきとしている。
   しかるべき止血が確認できたら、早期のワーファリンの再開は血栓症の発生を低下させる。
   特に血栓症の高リスク群に対しては、3日後の再開を勧奨している

 D.)DOAC
   この新しい薬剤は服用後1~4時間で作用し始めて、服用中止後24時間で消失する。
   しかしこの事は腎機能(GFR)と深く関係してくる。
   半減期が短いので、一時的な中断でも可能である。
   また服用後3時間以内では、活性charcoalの服用も推奨している。
   適切な止血を確認後は、ヘパリンでのbridging療法をしないで早期のDOACの再開を勧奨して
   いる。

 E.)triple療法(2剤の抗血小板薬と抗凝固薬の併用)
   明白なエビデンスは現在無い。
   欧米でのガイドラインでは抗血小板薬の中止を勧奨している。
   本ガイドラインでは循環器専門家とのコンサルトを推奨


次に内視鏡処置について解説しています。

 A.)低リスク処置
   通常の生検を伴う内視鏡検査は、プラビックスを含めた抗血小板薬の中止は必要ないとしています。
   しかしDOACに関しての研究(study)は現在無いとしています。

 B.)超リスク処置
   この分野ではESDと2cm以上のEMRを含みます。
   本ガイドラインでは、血栓症の高リスクの人にはアスピリンの継続服用を勧奨しています。
   但し2cm以上のEMRに関しては論争がありました。

 C.)高リスク処置
   この分野では全結腸内視鏡検査(TCS)と生検が含まれます。
   アスピリンの単独服用での検査では、出血の危険の増加は無いとしており継続服用を推奨していま
   すが、プラビックスは危険率が4.66と増加します。
   エビデンスとしてはワーファリンとDOACに関しては、危険率に増加はありませんでした。

  
次に心血管疾患のリスクについて

 A.)抗血小板薬
   プラビックスはアスピリンより効果が高いので、血栓症のリスクが高い人は5~7日の中断に留めて
   おく。
   抗リスクの血栓症の人が中断すると10倍の危険率となる。
   プラビックスの再開に関してはエビデンスが無い。

 B.)抗凝固薬
   中断による血栓症のリスクを低リスク(5%以下)、中リスク(5~10%)、高リスク(10%以上)に分け
   ている。
   僧帽弁狭窄や弁膜置換術が無い心房細動に関しては、CHADscoreに関係なく全て低リスクとして
   いる。
   高リスクの血栓症の場合は、ヘパリンとのbridging療法を行う。
   今一度、DOACに関して記載しているが、論争があり明白なガイドラインはない。
   本ガイドラインでは、低リスクの内視鏡検査では継続して、高リスクの検査では割愛する事を推奨して
   いる。其々のDOACにより割愛の程度は異なります。  (PDF参照)




  
私見)
 職員の皆さんにとって専門用語が多く分かりにくい点もあるかと思いますが、後日私に質問してくだ
 さい。
 またガイドラインが煩雑だと感じるかもしれませんが、本院でのガイドラインは至って簡素です。

 1)アスピリンを服用している患者さんに対しては胃カメラも大腸ファイバーも通常通りに検査をするが
   生検をする際は特に慎重に行う。

 2)プラビックスや抗凝固薬(ワーファリンやDOAC)を服用中の患者さんには通常の検査のみで、生検
   が必要な時は2次病院に紹介とする。
 
 ガイドラインとは診療の指針ではありますが、場合によってはそれをたたき台として、自分に適した診療
 を作成する事も許されると思います。更に言ってしまえば、診療の鉾になりますが、むしろ実地医家に
 とっては盾の意味合いが強い感じです。
 




Management of patients on antithrombotic agents.pdf

抗血栓薬と内視鏡.pdf












posted by 斎賀一 at 20:38| Comment(1) | 消化器・PPI