2018年01月05日

感染症迅速診断の有用性と限界

感染症迅速診断の有用性と限界
小児科Vol. 58 No.l3 2017



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 本院でも迅速診断を多用していますが、その診断的価値には自ずから限界があります。
だからと言ってこの診断方法を駆使するのが実地医家にとっても重要ですし、新たなeraと認識して
います。
 雑誌「小児科」の特集号に感染症迅速診断について載っていましたので、纏めてみました。


序論)
 迅速診断には、一定以上の病原体数が無くては陽性とならない。
 多くが目で判定するので、3%に判定ミスが生じる。
 病原体数が多いのは、鼻咽頭吸入液、鼻咽頭拭い液(本院ではこれが一般的)、鼻かみ法の順である。
 疾患により採取する部位に注意が必要


インフルエンザ)
 発症1日以内、特に12時間以内ではウイルス量が少ない。
 年長児や成人では反応が低い。 またB型はA型に比べて陽性感度が低い。
 銀増幅法(本院では富士フイルム社)では発症後6時間でも84.6%の感度であるが、24時間を過ぎると
 他の検査と差は無く、ほぼ90%の感度である。


RSウイルス)
 世界的にはインフルエンザよりも死亡率が高い。
 日本でも1~3%が下気道疾患で入院する。
 一般的には2歳までに感染するが、高齢者施設内での流行も報告されている。
 迅速診断の保険適応は、入院中か一歳未満である。
 迅速診断の感度は70%で、特異度は90%以上
 しかし感度は32~79%とばらつく場合もあり、ウイルス量にもよる。
 RS感染による気管支炎では、43.6%が細菌感染を合併しており注意が必要
  (肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ)


マイコプラズマ)
 PA法はIgM抗体を調べている。また結果が出るまで1週間かかり、迅速とは言えない。
 イムノカードはやはりIgM抗体を調べているが問題点が2つある。
 IgMは発熱の病初期には陽性にならい。
 数か月IgMは持続するし、マイコプラズマは再感染を繰り返すため、現在の感染を反映していない可能
 性がある。
 咽頭で検査する抗原検査は感度70~80%、特異度90~100%とLAMP法に匹敵するが、やはり20%
 程は見落としている。
 マイコプラズマは下気道が感染の部位である。上気道ではその1/100の菌量である。
 銀増幅検査(本院では富士フイルム社製)では、少ない菌量で感度を上げる事が期待されている。
 また検査時に咳をして菌を上気道に誘導し、咽頭を擦過することも大事である。
 この場合は感度95.8%、特異度100%と良好な結果が報告されている。
 更に4日以降では、感度は100%であった。


ヒトメタニューモウイルス : hMPV)
 RSウイルス感染症と類似している。
 hMPVはRSよりやや年長児に多く、高熱で有熱期間が長い。殆どが5歳以下の罹患である。
 生涯に何度も再感染を繰り返す。
 迅速抗原検査は感度70~100%、特異度93~100%と良好
  (しかし保険適応は肺炎の疑いでレントゲン検査を施行、かつ6歳以下の場合とされています。
   本院では必要な時に自費でお願いしています。本論文では上気道感染症でドクターショッピング
   をするケースが多く、この検査をする価値があるとしています。)


A群レンサ球菌 : GAS)
 迅速検査は感度90%以上、特異度95%以上と優れている。
 採取法は、後咽頭壁と扁桃の両方を擦過する。
 問題は健常者の小児でも5~20%が常在菌としている。その場合は治療の必要はなく、また同胞が
 発症した場合でも抗菌薬の投与は必要ないとされている。
 更に3歳未満の乳幼児にはGASの咽頭炎は稀とされており、検査も推奨されていない。
 つまり、3歳未満の咽頭炎ではアデノウイルスを考えて、それ以上の学童児ではGAS検査をして、抗生
 剤の適否を診断する。一方で感冒症状や結膜炎などがあればアデノを考える。


ロタウイルス)
 冬季に流行すると言われているが、最近では3~5月にシフトしている。
 迅速検査の感度は90%以上で特異度も90%以上


ノロウイルス)
 迅速検査の保険適応は3歳未満か65歳以上
 感度が低いので、診断には臨床症状と合わせ総合的に診断する必要がある。


デング熱)
 迅速検査が出来るようになりました。
 疑わしい患者には保健所と要相談    ※手順は下記のPDFに記載

 

クラミジア)
 3種類のクラミジア感染症がある。   ※下記のPDF参照
 小児の気道感染症の迅速診断は停滞しており、疑われれば治療優先となる。






私見)
 乳幼児の気道感染症に迅速検査を駆使して診断していく事は、実地医家にとって総合的に、立体的に
 診断する醍醐味すら感じます。
 尚、感度とは診断の確率で、特異度とは検査で陽性となった時の信頼度と、大雑把に理解してください。
 ストライクゾーン・ど真ん中なんて検査はありません。




迅速検査.pdf










posted by 斎賀一 at 20:16| Comment(1) | 小児科

2018年01月04日

ペースメーカー装着患者でもMRI検査は安全

ペースメーカー装着患者でもMRI検査は安全

Safety of Magnetic Resonance Imaging
in Patients with Cardiac Devices
N Engl J Med 2017;377:2555-64.



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 ペースメーカーを付けていてもMRI検査が安全との論文を以前の私のブログでも紹介いたしましたが、 (2017-3-01) 同じ雑誌NEJMより更に安全性を示す論文がでました。
今回の論文では、問題の胸部周辺を含めてのMRI検査のデータですし、対象はconditional型又はlegacy system(特別にMRI検査に対応していない従来型のペースメーカーとICD)です。




纏めますと

1) アメリカのFDAもメーカーもlegacy typeに関しては、MRI検査に関して全面的には許可していま
   せん。 (日本のガイドラインでも制限を設けています。)

2) 2003年~2015年にかけて1,509名に2,103例のMRIを実施しています。
   58%がペースメーカーで42%がICDです。

3) MRI検査中は継続して心電図モニターをつけ、血圧およびSPO2を3分おきに測定し、専門の看護師
   が付き添って監視しました。

4) MRI検査直後とその後の来院時(平均1年)に、それぞれのデバイス(ペースメーカーとICD)を
   チェックしています。

5) MRI 検査後に9件(0.4%、95%信頼区間 0.2〜0.7)のデバイスに対するバックアップモードの
   リセットが起きています。      ※下記のPDFを参照
   9件中8件のリセットは一過性でした。
   1 件ではペースメーカーの電池寿命が残り1ヵ月未満で、心室抑制ペーシングモードにリセットされ、
   再びプログラミングされることはなかったが、このデバイスはその後交換されています。

6) デバイス・パラメータで、MRI直後に最も多くみられた顕著な変化(ベースラインから 50%を超える)
   は P 波振幅の減少で、患者の 1%で発生しました。
   長期追跡時(追跡結果が得られた患者は 63%)に特に多くみられたベースラインからの顕著な変化
   は、P 波振幅の減少(患者の 4%)、心房捕捉の閾値の上昇(4%)、右心室捕捉の閾値の上昇
   (4%)、左心室捕捉の閾値の上昇(3%)でした。リードパラメータの変化に臨床的に重要なものは
   なく、デバイスの交換や再プログラミングを必要とはしませんでした。
   下記のPDFに表を掲載します。
    (私もペースメーカーに関しては近医の専門家に相談していますが、皆さんは下記のPDFで勉強
     してください。)

7) 本論文の結論として
   200例に1件のアクシデントの割合となります。
   本研究では9例のリセットがありましたが、1件が軽度の自覚症状で、1件がバッテリーの交換時期
   でした。
   以前の報告ではICDの方がペースメーカーより影響を受けやすく、胸部周辺のMRIの方が他の部位
   のMRIよりリスクがあるとのデータでしたが、今回の論文では適切なプロトコールで行えば、全てに
   関して安全性で問題はないとしています。
   (ペーシングモードではペーシング依存例は非同期モードに、それ以外の例はデマンドモードに変更
    しました。頻脈性不整脈治療機能は無効にしました。つまり現在では一般的な対応のようです。)





私見)
 以前のブログの内容よりも一段と踏み込んで行けそうです。
 ペースメーカーの患者さんで、MRI検査を必要とする事が意外に多く遭遇しますが、二次施設病院に
 直接ご紹介するには、予約や時間外などで時間的制約が間々あります。その様な際はベネフィトを考慮
 して、近医の脳外科でのMRI検査を迅速にお願いするのも許される範囲と考えます。
 但し、患者さんには常にペースメーカーの手帳を持ち歩くことを指導してください。






MRI.pdf

ペースメーカーの基本と設定.pdf

ペースメーカーの基本.pdf

ペースメーカーの入門.pdf

ペースメーカーの基本 (2).pdf









posted by 斎賀一 at 13:13| Comment(0) | 循環器