2018年01月19日

多発性硬化症

多発性硬化症
 
Multiple Sclerosis
n engl j med 378;2 nejm.org January 11, 2018



0119.PNG
  
      

 NEJMに多発性硬化症(multiple sclerosis)の総説が載っていましたので、勉強しながら纏めてみま
した。



1) 初期には中枢神経系の白質に脱髄病変、炎症、グリア病変が起る。
   (神経細胞は灰白質にあり、軸索(神経線維)は白質を通ります。これらの神経細胞やそこから伸びて
   いる軸索(神経線維)の形態、機能の維持に関与しているのがグリア細胞です。
   軸索はミエリン鞘によって保護されています。グリア細胞にはミクログリア、アストロサイト、オリゴ
   デンドロサイトの3種類があります。

2) ミエリン鞘は白質のみにあるのでなく、灰白質にもニューロピルとして存在する。 (下記PDF参照)
   よって脱髄は灰白質(大脳皮質)でも起こる。
   (神経系は外胚葉なので中胚葉の結合組織に対しての接触は血管系のみとなります。よって灰白質
    の脱髄は軟膜直下の血管より病変が始まります。)
   以上より大脳皮質の脱髄病変はその半分は血管周囲に起きています。
   しかし皮質では血管の透過性亢進も軽いので炎症所見も白質よりも軽度です。
   時に皮質病変は血管周囲以外にも軟膜下より起きます。そして洞(sulcus)の周辺に炎症所見と
   して、まるでリンパ濾胞様の形態を呈する事もあります。  
   脊髄の病変は生活機能に重要な影響を及ぼします。
   血管周囲ばかりでなく脊髄の灰白質(つまり脊髄神経細胞の多い所)も脱髄病変が生じます。
   その結果脊髄の横断病変が出現します。
   脳神経である視神経も重要な病変部位です。

3) 原因が単独なのか複合的かは議論が分かれています。
   稀ではありますがある種の誘因が想定されています。
   原因病態としては一番可能性として挙げられているのは自己免疫疾患です。
   体質としてはHLA-DRB1*1501が想定されています。
   遺伝子的には200以上が判明されています。
   環境因子としては、日光暴露、ビタミンD、喫煙、肥満、伝染性単核症、EBウイルスも関与が想定
   されています。

4) 病態
   基本的には免疫機能がグリア細胞(ミエリンを形成するオリゴデンドロサイト、ミクログリア、
   アストロサイト)と神経細胞にダイナミックに影響して病変を形成する。
   B細胞、抗体、更にT細胞のhelper(CD4)、cytotoxic(CD8)が関与する。
    (詳細は元文献の図譜を参照)
   血管の透過性亢進が状態の進展に関与している。
   特に血管脳関門(BBB)の破壊が重要な側面となる。
   その結果、ミクログリアの活性化が生じて更なる免疫機能の亢進がカスケード的に発生する。
   これはMRIでも観察できる。

5) 急性期のプラーク形成はオリゴデンドログリアとは関係なく、ミクログリアとアストロサイトの活性化
   で生じる。
   ミクログリアは灰白質では殆ど活性化していないが白質でその活動は顕著である。しかもその作用は
   二面性があり、炎症を促進するがミエリン残渣を掃除(クリアランス)をして再生を促す働きもある。
   ミクログリアは灰白質では機能低下したシナップスを取り除くことによりアストロサイトが誘導する
   神経変性の進展を食い止めている。
   結局、このアストロサイトが急性期のプラーク形成には重要な役割をしている。
   一方で、オリゴデンドロサイトの前駆細胞の再生の役割も注目されてきているが、この点に関しては
   今後の研究課題である。

6) 脱髄した軸索(神経線維)は障害を受けやすくなっていますし、また変性がカスケード状に進展も
   します。しかしミクログリアやオリゴデンドログリアの前駆細胞などの働きで再生も起こるようですし
   緩解と再発を繰り返すのが特徴です。

7) 治療に関しては省略いたします。






私見)
 一般的な解説はネットでも手に入りますが、今回のNEJM 論文ではグリア細胞との関係や病変部位に関して大変参考になりました。大分専門的になってしまいましたが出来る範囲で解説しました。
 結論的には、多発性硬化症は自己免疫疾患で神経線維の衣であるミエリンが破壊されて裸の状態になった疾患で、それにはグリア細胞が深く関与しており、再生と破壊が繰り返されていると理解してくだ
さい。

 下記に私の蔵書とネット解説も掲載いたしますので、職員の皆さん、勉強しておいてください。


 
  宗教を信じている人より宗教的な人の方が、私は好きです。
  疾病とは、人を宗教的にするものと常日頃思っています。



 極論で語る神経内科 : 丸善出版

 下記のPDFを参照、同書籍に視神経の診かたのネットがありましたので併せ掲載します。

   
  http://neuroexam.med.utoronto.ca/








nejm.pdf

極論.pdf

MSはこんな病気です|多発性硬化症.jp 〜多発性硬化症に関する情報を紹介するサイト〜.pdf

慶応大学.pdf

neuropil.pdf

白質 灰白質.pdf

軟膜.pdf





  
posted by 斎賀一 at 19:51| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2018年01月16日

新型インフルエンザに対する備え

新型インフルエンザに対する備え
             <ツイッター版>




     今現在、季節性インフルエンザの対応にシクハックしていると言うのに、
    なんで今、新型インフルエンザの勉強をしなくては!?  と不満顔の職員の皆さん。
    私は若い頃、変な時に貴族趣味に陥るのです。
    試験の前に哲学書を読んだり...
    恋人とデートをする前に禅書を紐解いたり...。
 
     年を重ね、試験も恋人も遠い昔の出来事となってしまいました。  
    それでも私は昔から言い訳は嫌いです。
    だけど貴族趣味に耽るのは好きなんです。



    新型インフルエンザ.pdf

    鶏で高病原性鳥インフルエンザ、9万羽殺処分へ:日経メディカル.pdf













posted by 斎賀一 at 21:18| Comment(1) | インフルエンザ

2018年01月15日

糖尿病ガイドライン;AACE/ACEより2018年版

糖尿病ガイドライン;AACE/ACEより2018年版

CONSENSUS STATEMENT BY THE AMERICAN ASSOCIATION OF
CLINICAL ENDOCRINOLOGISTS AND AMERICAN COLLEGE OF
ENDOCRINOLOGY ON THE COMPREHENSIVE TYPE 2 DIABETES
MANAGEMENT ALGORITHM – 2018 EXECUTIVE SUMMARY



0115.PNG

   

 以前に私のブログでADAからのガイドラインをご紹介しましたが(2017-12-19)、今回はAACE/ACE
からのガイドラインです。
治療薬に関して一層詳細になっていますので、纏めてみました。


1) ライフスタイルの改善
   下記のPDFのグラフを参照してください。
   全患者に適正なライフスタイルが必要だが、これのみで適切な他の治療を遅らせたり滞ったりしては
   ならない。
   適正な休養、つまり睡眠も重要で7時間を推奨している。睡眠不足はインスリン抵抗性と関係する。


2) 前糖尿病状態
   膵臓のβ細胞の代償不全が反映しているが、その主な原因は肥満である。
   ライフスタイルの改善と薬物療法の併用が奏功するが、薬剤としてアクトスは皮下脂肪の増加と体液
   の貯留の点が懸念される。
   GLP1薬も有効と言われている。


3) 薬物療法
   治療目標はA1cを6.5以下とする事だが、低血糖が一番の懸念する点である。
   一般的に治療当初のA1cが7.5以下では単独療法、7.5以上では2剤併用療法であるが、何れに
   してもライフスタイルの改善は並行する。
   治療にもかかわらずA1cが9以上で症状があればインスリンの併用だが、症状がなければ経口薬の
   増量を試みる。

   個々の薬剤を見てみると

   メトグルコ:
   低血糖の心配は少ないし体重の増加も起こさない。
   基準は2000~2500mg
   腎機能低下患者でも服用可能となったがeGFRが30以下では使用すべきでなく、30~45では量を
   制限すべきで、45以下の場合は少量より開始すべきである。
   副作用としてのビタミンB12欠乏症に対して常に監視する。  (貧血、神経症状)

   SGLT-2阻害薬:
   体重減少と血圧降下作用があり有効である。
   とくにジャディアンスとカナグルは、心血管疾患にも有効との研究がある。
   外科手術の24時間前には服用を中止する必要がある。

   DPP4阻害薬:
   低血糖の危険は少ない。
   心血管疾患に対する効果は良くもなければ悪くもない。
   但し、一部の薬剤で心不全を悪化させたとの研究もある。

   アクトス:
   唯一の直接的なインスリン抵抗性を改善する薬剤である。
   低血糖を起こす可能性は低く、継続使用が可能
   心血管に対して有効に働くが、副作用としては体重増、骨折、浮腫、心不全が挙げられる。
   その際は少量(30mg)用いるか、SGLT-2と併用すると浮腫は軽減できる。
   問題視されていた膀胱癌との因果関係は否定された。

   SU剤(アマリール、グリミクロン):
   A1cの効果はあるが、二次無効や体重増加があり、低血糖の心配もある。

  インスリン:
   2剤の経口薬でA1cが8以下にならない時は、次の選択肢は3剤目としてSGLT-2阻害薬を追加
   するか、インスリンが必要となる。
   その場合は基本的に時効型(作用が長く原則1日1回の注射)を使用
   トレシーバの方がランタスより1日間安定して効果がある。
    (以前の私のブログをご参照ください。最近では新製品も出現しており一概には言えません。)
   コントロールが不十分の時は、超速効型インスリン(ノボラピッド)を夕食前に追加する。
    (一日で一番食事量が多いと想定された場合)
   混合インスリンのライゾデグも有効だが低血糖に注意が必要
   SGLT-2阻害薬を併用するのは有効
   インスリンの導入により体重は1~3kg増加するので注意


4) 血圧
   130以下が目標だが、出来れば120以下を想定する場合もあり。
   ACE-IかARBが基本薬
   CCBや降圧利尿薬も選択肢
   心不全があればβブロッカーも用いる。 (この場合は基本的にはアーチストか?)
   ライフスタイルの改善が奏功する。
    体重の減少、塩分制限、節酒、運動


5) 脂質異常
   下記のPDFを参照
   基本的には合併症の予防のため厳格に管理が必要との見解





私見)
 最近は風邪をこじらせて体も心も萎えてしまいました。(インフルエンザではないのでご心配なく。)
 そんな折、上条恒彦の木枯し紋次郎の歌を口ずさみながらブログを仕上げました。
 
https://www.youtube.com/watch?v=5FzW2V0CcF4









diabetes-algorithm-executive-summary.pdf

糖尿病acc.pdf

糖尿病薬.pdf

インスリン製剤.pdf









posted by 斎賀一 at 21:15| Comment(1) | 糖尿病