2017年11月24日

利尿薬:特に心不全治療において

利尿薬:特に心不全治療において
                 n engl j med 377;20 nejm.org November 16, 2017



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 心不全は体液の過剰な貯留が問題です。この余分な体内の水分を利尿薬で排出する事が、現在では心不全治療の中心の一つです。
利尿薬の中でも腎尿細管のヘンレ係蹄に作用して、水分とナトリウムの再吸収を抑制するループ利尿薬が主体となります。
  (本院では、ラシックス、ルプラック、ダイアートを使用。利尿薬全体については下記のPDF参照) 

 進化する過程で、魚から生物は進化して、陸に上がってからは水とナトリウムが不足する状態となりま
 した。そのために陸で生活する動物には、レニンーアンギオテンシン系と言うナトリウムを取り入れておくシステムが成立しました。
余分なナトリウムを排除しようとして利尿薬を使えば、生命体はびっくりしてこのレニン系を作動し始めます。この作用が利尿薬を使用する時に複雑な反応となります。


 NEJMより、心不全治療としての利尿薬に対する総説が載りましたので纏めてみました。

1) ループ利尿薬はヘンレ係蹄に作用して、ナトリウムの再吸収を抑制する事により利尿作用を発現し
   ます。しかしほぼ同じ部位のMacula densaに作用して、レニン活性の亢進と(レニンはナトリウム
   の再吸収を促進し血圧をも上昇させます。)腎糸球体のフィードバックの抑制(正常では Macula
   densaにナトリウムが入ると、ナトリウムが欠乏していると認識して腎濾過率が下がるが、この場合
   フィードバックが抑制されて腎濾過率が亢進して尿量が増加する事になる。)を引き起こし、ループ
   利尿薬の副作用と効果の増強に繋がってしまう。   (PDFの図1参照)
   また、ループ利尿薬はレニンーアルドステロン系を刺激して血管を収縮する事もあるが、直接に血管
   拡張性のプロスタグランディンを増加させ血管を拡張する事もあり、高用量の経静脈投与ではどちら
   になるかは分からない。
   つまりループ利尿薬は相反する作用を持ち合わせている事になる。

2) ループ利尿薬は用量依存性に効果があるが、ある一定以上では効果が平坦となる。(つまり天井
   現象)     (PDFの図2−A)
   また、ループ利尿薬には閾値があり、それを超えて初めて効果を発現すると言われているが、用量
   を増加してこの閾値を超えれば時間依存性となり、あたかも天井現象が無いかの如く利尿効果を
   示す。     (PDFの図2−B)
     

3) ループ利尿薬の半減期は短いが、腸管からの吸収は食物の影響で遅れるので実際の半減期は
   結果的に長くなる。よって経静脈の方が経口より約2倍の血液濃度となる。
   心不全で腸管の鬱血があれば経口での吸収も悪くなり、経静脈でないと効果が出ない場合もある。

4) 本院ではループ利尿薬はラシックス、ルプラック、ダイアートのためルネトロンに関しての記載は
   省略します。 (下記のPDFを参照)

5) 利尿薬の本来の目的は尿量を増やす事ではなく、ナトリウムと水の不利益なバランスの是正である。
   ループ利尿薬の半減期は短いので、1日2回の投与では利尿後の体液の貯留が起きてしまう。
   24時間の水分の摂取よりも排泄の方が多くなくてはならない。
   よって心不全患者では、尿量と摂取量と薬剤の投与間隔が一番重要となる。

6) 体液量(細胞外液)が減少すると人体のホメオスターシスが働き、利尿薬に対する人体の反応が低下
   してくる。これをブレーキ現象と言う。これは交感神経の優位、レニンーアンギオテンシン系の賦活化
   尿細管のリモデリングとして説明されている。この事が利尿薬抵抗性となってしまう。
      (PDFの図―2C)

7) ループ利尿剤が高用量になるに従ってレニン系と交感神経系が刺激され、結果的には予後が悪化
   してしまう可能性がある。

   DOSE研究について
    308人の心不全患者を対象
    経口投与、経口薬と同量の静脈投与の低用量群、経口薬の2.5倍の静脈投与の高用量群に
    分け、更に静脈投与群を、12時間おきに1日2回の急性静注と一日継続の点滴静注に分けて
    調べた。




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  結果は高用量群の方が心不全症状の改善に優位であったが、レニン系の活性化により腎機能の悪化
 も生じている。
 しかしこの副作用は一過性で、その後は回復しており総合的には高用量群の方が勝っていた。
  DOSE研究には限界があるが、一定の基準になる研究とされている。
  (経口薬の2.5倍量の急性静注を、1日2回行うのが基準とされているようです。)

8) サムスカ、アルダクトンA、セララに関しては省略しますが、私の下記の抜粋PDFをご参照ください。

9) ループ利尿薬はヘンレ係蹄だけでなく、それより下部の集合管に対してもレニン活性と低カリウム
   血症が相まって作用する。その結果下部細尿管のリモデリング(構造変化)が生じて、ナトリウムの
   再吸収が起こり、結果的にループ利尿薬の抵抗性に繋がる。

10) 高血圧治療薬のACE阻害薬とARBに関しての作用は、この場合は複雑である。
   これらの薬剤はレニン活性を抑制するので利尿の方向で作用するが、血圧の低下作用により利尿を
   低下させる可能性もある。特に心不全患者ではその傾向が高い。
     (下記のPDFで私なりの考えを記載します。)

11) サイアザイド系利尿薬との併用はモニタリングに注意する必要がある。
   2次的に投与するのは良いが、細尿管のリモデリングを生じてしまうので少量投与が原則





私見)
 取り敢えず私のストラテジィーとして、
 潜在性心不全で高血圧の患者さんには、低用量のARBを服用する。
 心不全の悪化傾向があればルプラック。
 明らかな心不全の徴候となればラシックスで、初期治療をして落ち着いたらばダイアートに変更。
 コントロールが不良ならナトリックスを少量追加。
 何れにしても、ループ利尿薬は少量で1日2回服用が原則。


 尚、本院ではサムスカを初期治療として用いる事はありませんが、逆紹介の形で継続処方をする事がありますので、この薬剤も勉強しておきましょう。
 
 なんだか目が回ってきましたが、結論的には、あまり強気に出ると人体のホメオスターシスの反撃を受けてしまうので、寝ている猫を起こさないように、静かに慎重にループ利尿薬を使うようにします。


 私の蔵書より抜粋して下記のPDFに掲載しましたので、ご参照ください。

   1) エクスプレス循環器病ファイル : メディカルサイエンス・インターナショナル
   2) medical practice 心不全 : 2014年3月号 : 文光堂





利尿薬 NEJM.pdf

利尿薬抜粋.pdf

利尿薬表1.pdf

ルプラック.pdf

サムスカ.pdf

サムスカ (2).pdf

うっ血解除のため.pdf

運動中に意識障害と痙攣を生じる.pdf







posted by 斎賀一 at 21:37| Comment(1) | 循環器