2017年11月04日

除菌後のPPI(潰瘍治療薬)が胃癌を誘発?その1

除菌後のPPI(潰瘍治療薬)が胃癌を誘発?その1
 
Long-term proton pump inhibitors and risk of gastric
cancer development after treatment for Helicobacter pylori
                                         BMJ;GUTより


1104.PNG



 色々なネットで紹介されている論文ですが、若干誤解が生じるといけないので私もブログしてみました。
胃酸の分泌抑制薬は、強力なPPIとやや弱めのH2ブロッカーがありますが、以前よりPPIは胃癌を誘発
しないか懸念されていました。
多くの論文では誘発はしないものとされています。 (その2 でご紹介予定)
今回の論文では、ピロリ菌除菌後に引き続きPPIを服用すると、胃のホルモンのガストリン分泌が亢進して
粘膜増殖を引き起こし、やがて胃癌に結びつく危険があるとの事です。


纏めますと

1) 対象は18歳以上(平均54.3歳)の63,397人のピロリ菌の除菌成功例を対象にしています。
   2003~2012年に除菌して、最終2015年12月まで調査しています。

2) H. pylori除菌失敗例、除菌前または除菌後12力月以内に胃がんと診断された患者、除菌時または
   除菌後に胃潰瘍と診断された患者は除外しています。(胃潰瘍を胃癌と誤診している可能性を除外
   するため)

3) Confounder(交絡因子)つまり直接関係のない因子が紛れ込まないために、比較対象としてH2
   ブロッカー使用者と、ピロリ菌の除菌をしないでPPIを服用した人も同様に調査しています。

4) 比較した危険率の表を下記のPDFで示し解説します。





私見)
 若干の意訳と大いなる偏見で本論文を解釈します。

 1) ピロリ菌がいると萎縮性胃炎になっている。これが胃癌の発生母地でもある。

 2) ピロリ菌による萎縮性胃炎とは、胃底腺(固有腺)の萎縮である。そのため胃酸の分泌が低下して
    いるところにピロリ菌の除菌を行うと、萎縮性胃炎は治癒の方向に向かうが、再び胃底腺の回復に
    より胃酸が分泌され始める。そのため除菌後に却って胸焼けなどの消化器症状が出現する。
    ここでPPIを処方すると胃酸の分泌は抑制されるが、逆にガストリンホルモンが分泌されてきて
    しまう。
    このガストリンは粘膜を増殖する作用があり、胃癌発生の母地である萎縮性胃炎があると、胃癌が
    発生する危険が増加する。

 3) よって除菌後の胃酸分泌が亢進した場合の治療としては、あまりガストリン分泌に関与しないH2
    ブロッカーを投与した方が無難。

 4) 下記のPDFで解説しますが、単に逆流性食道炎の治療や、抗血小板薬と抗凝固薬とを併用する
    PPIの場合は、原則として胃癌発生とは関係ないので取り敢えずは併用しても良い。



 最近はPPIの風当たりが強いようで、かわいそうになってしまいます。
 今回の本論文の主旨はピロリ菌除菌後で萎縮性胃炎がある場合に、長期にPPIを服用するのを問題視
 した点だと思います。
(個人的な過激な意見を申しますと、ピロリ菌の除菌は程々で定期的na胃カメラ検診をお勧めします!?)

 尚、英国では逆流性食道炎の略語はGERDではなく、GORDとなります。これは英国ではesophageal のスペルがoesophageal になるからです。
  (ネット検索より)




          1104-2.PNG


  
 
 胃体部では固有腺が胃底腺と同じ意味です。ここから胃酸が分泌されます。
 萎縮性胃炎とは、ピロリ菌による炎症でこの胃底腺が萎縮してしまう事です。
  「それじゃ〜 萎縮性なら胃酸がないから胃薬はいらないか?」 と言う事ですが...。
 後日、その2で考えたいと思います。




PPIと胃癌.pdf









posted by 斎賀一 at 18:49| Comment(2) | 消化器・PPI