2017年07月24日

早期前立腺癌の根治手術と経過観察(積極的監視)の比較

早期前立腺癌の根治手術と経過観察(積極的監視)の比較
 
Follow-up of Prostatectomy versus
Observation for Early Prostate Cancer

n engl j med 377;2 nejm.org July 13, 2017



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 以前に私のブログでご紹介したPIVOT研究の続編です。  
   (経過観察の期間が10年から20年に延長しています。)
  

 纏めますと   (一部日本版をコピペしました。)

 1) 1994 年 11 月〜2002 年 1 月に、限局性前立腺癌患者 731 例を根治的前立腺全摘除術群と
    経過観察群に無作為に割り付けましたが、更に2014 年 8 月まで追跡を延長しています。

 2) 追跡期間 19.5 年(中央値 12.7 年)の間に、死亡は手術群 364 例中 223 例(61.3%)、
    経過観察群 367 例中 245 例(66.8%)で発生した。

 3) 前立腺癌または治療による死亡は、手術群 27 例(7.4%)、経過観察群 42 例(11.4%)で
    発生した。

 4) 内リスク患者では、手術は経過観察よりも低い全死因死亡率に関連した可能性があるが、低リスク
    患者、高リスク患者では関連しなかった可能性がある。

 5) 前立腺癌または治療に関連する日常生活動作制限の頻度は、2 年目までは手術群の方が経過
    観察群よりも高かった。

 6) 結論として、限局性前立腺癌患者の 20 年近くにわたる追跡により、手術は経過観察と比較して、
    全死因死亡率と前立腺癌死亡率が有意に低いことには関連しないことが示された。

 7) 考察では以下の様に述べています。
    手術の群が全死亡率で6%の減少、前立腺癌関連死亡率は4%の減少と一見有利のような結果
    だが、統計学的に処置するとそれ程の差は無い。
    低リスク群と高リスク群では3%以下の差でしかない。
    手術しても41%が進行して、34%が抗ガン治療を含めた対応をしている。

    考察を纏めると
    a) 低リスク群でPSAが低値の場合は、進行がかなり緩徐である。
     b) 中リスク群では手術が有利の様だが、更なる検討が必要。
      グリソンスコアーの改訂によりグレードが高くなり、多くの患者が経過観察から手術に回って
      しまった。
    c) 高リスク群では予後が悪いので、手術のメリットを今後十分に検討する必要性がある。
    d) 手術により、失禁や性生活を含めたQOLの低下を招く。




私見)
論文のグラフは下記のPDFに収めましたのでご参照ください。
グラフでも明らかに手術の方が優位ではないかと思ってしまいます。
論者は前立腺癌は進行が緩徐だから経過観察でよいとしている様な印象です。
しかし早期の前立腺癌の中には進行が速いものも含まれているかもしれないと想像します。
差は無いと言っても第一に手術を想定し、前立腺癌は進行が遅いので、第二に経過観察の方法もあると
患者さんに説明するのが妥当ではないかと思いました。




前立腺癌.pdf









posted by 斎賀一 at 21:22| Comment(1) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2017年07月22日

アナフィラキシーのアドレナリン過剰投与に対する警告

アナフィラキシーのアドレナリン過剰投与に対する警告

Adrenaline overdose in pediatric anaphylaxis: a case report



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 食物アレルギーを含めてアナフィラキシーにはエピペンをはじめ、アドレナリンの筋肉注射が第一選択
です。

今回、BMCよりアドレナリンの過剰投与の症例が報告されています。

簡単に症例をまとめてみますと、


  9歳の男児(32kg)で喘息の既往もあり、以前より乳製品の食物アレルギーを有していました。
  うっかり学校で乳製品を食べてしまいました。
  その直後に蕁麻疹、喘鳴、ショック状態となり、アナフィラキシーの診断の基で学校の先生が
  エピペン300μを筋注し、サルタノールの吸入を行っています。
  ここで救急車が到着していますが、未だ意識は朦朧として脈拍は120、SPO2は85~90、
  血圧は測定できていません。更なるエピペン300μを筋注していますが、
  不反応とし、2回のアドレナリン静注を施しています。
  その後、救急病院に転送されています。
  病院に到着時には興奮しており、頻回の嘔吐を繰り返し、血圧は207/87、脈拍は160、
  末梢循環不全でSPO2は測定できません。
  アドレナリンの過剰投与を疑ってアドレナリンの点滴を中止。その後、30分で血圧は安定。
  しかし喘鳴は続いており、ステロイドの点滴を開始して呼吸状態も回復しています。



論者は述べています。
「アナフィラキシーではアドレナリンの筋注は第一選択であり又、静注より安全であるが、アナフィラキシーとアドレナリンの過剰投与とは症状だけでは似ており、注意が必要である。
その際に血圧の管理は最も重要だ」




私見)
学校の先生と救急隊員の協力はアナフィラキシーの即時の治療には今や欠かせません。本症例は日本では考えられない事例と思います。
しかし、現在あるエピペンは体重設定では不便を感じます。多くの医師はボスミン(アドレナリン注射薬)
での苦い経験を持っていると思います。
もちろんこの場面はアナフィラキシーではありますが、少量頻回投与の設定もありではないかと思っています。(例えば、50、100、150μの3パターンの組み合わせで2回接種)
しばらく、本院では自前の注射も含めて対応してまいります。




anaphylaxis a case report.pdf


エピペン.pdf
















posted by 斎賀一 at 15:51| Comment(3) | 小児科

2017年07月21日

筋萎縮性側索硬化症(ALS) その1

筋萎縮性側索硬化症(ALS) その1

n engl j med 377;2 nejm.org July 13, 2017



0721.PNG




 NEJMよりケーススタディが載っていました。
纏めてみました。


 1) ALSは運動神経の変性疾患であり、多くは四肢から症状は始まるが、1/3は
    球麻痺(延髄の運動神経麻痺)から発症して構音障害、嚥下障害が出現。

 2) 最近では認知症も15~20%合併してピック病様になる。

 3) 発生頻度は1/400人(かなりの頻度です)

 4) 家族性が10%で散発性が90%

 5) 50歳から増加する。若年層での発症は遺伝性を疑う。

 6) 原因は遺伝と環境の両者が想定されている。
    種々の原因遺伝子が発見されているが、散発性の場合には環境因子が関与して、
    遺伝子に突然変異を誘発する事が推定されている。

 7) その他の原因として、殺虫剤、レトロウィルス、繰り返される頭部外傷、軍役、タバコ、
    重金属が考えられている。



私見)
グラフは下記のPDFに収めました。
ALSに関して勉強をし直そうと考えて、神経内科の教科書を紐解きましたが、
残念ながら実地医家用の一元的な、つまり初動診断的な解析はありませんでした。
大病院では出来上がったALSしか診ていないのではと訝ります。
再度勉強して、私の身の丈に合った診断を第2弾としてブログしたいと思います。



プレゼンテーション1.pdf













posted by 斎賀一 at 20:02| Comment(2) | 脳・神経・精神・睡眠障害