2016年12月29日

乳児の急性中耳炎に対する抗生剤の投与期間

乳児の急性中耳炎に対する抗生剤の投与期間
 
Shortened Antimicrobial Treatment for Acute Otitis Media in Young Children
N Engl J Med 2016;375:2446-56



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 最近では、急性中耳炎に対しての抗生剤の投与期間は短縮の傾向でした。
今回はクラバモックス(ペニシリン系抗生剤)を、10日間と5日間の投与での比較を行っています。
6~23カ月の520名の急性中耳炎を対象にしています。
 転機は臨床反応(徴候・症状の反応をもとに系統的に評価)、再発率、鼻咽頭保菌率で評価を行っています。又症状を重症化スコアー化しました。

 5日間投与群では、臨床的失敗が認められた患児の割合が 10日間投与群より高かった。(229 例中 77 例 [34%] 対 238 例中 39 例 [16%])
再発率、有害事象の発現率、ペニシリン非感受性菌の鼻咽頭保菌率に群間で有意差は認められなかった。急性中耳炎に罹患した生後 6〜23 ヵ月の患児に対する抗菌薬投与期間の短縮により、標準期間投与した場合と比較して、好ましくない転帰が得られた。(以上、日本版NEJMよりのコピペで御免なさい。)




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    原因菌としては肺炎球菌とインフルエンザ菌が主でした。




私見)
 色々なネットでこの論文が評価されています。
 一番多い意見としては、これは2歳以下の乳児を対象にしており、急性中耳炎一般を論じていないので注意が必要とするものです。
また 、コクランより短期投与での効果について既に報告されており、一概に10日間の治療が必要とは断定できないとしています。
 しかし、この論文は投与薬剤が一種類であり、中耳炎の重症度分類も明白である点を評価しています。
クラバモックスはペニシリン系です。溶連菌感染症ではペニシリン系の10日間療法と第3世代のセフェム系の3〜5日間療法の比較は永遠の課題です。これとやや類似しているように感じられます。
 取りあえず、難治性が疑われれば、クラバモックスの10日間療法をしても耐性菌はそれ程出現しないかもしれません。








posted by 斎賀一 at 13:00| Comment(1) | 小児科

2016年12月27日

糖尿病のガイドライン;2017年

糖尿病のガイドライン;2017年

Standards of Medical Care in Diabetesd2017



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 糖尿病のガイドラインがADA(アメリカ糖尿病学会)の雑誌より出版されていますのでまとめてみました。


 1) ライフスタイル
     座りっぱなしは良くない、30分おきに動くことが大事。

 2) 治療目標
     ヘモグロビンA1cは7以下
     食前血糖は130以下、食後は180以下


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    低血糖には注意
    血糖が70以下で砂糖などをすぐに摂取
    50以下ではブドウ糖の経静脈的投与   
                              以上意訳


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 3) 薬物治療
     第一選択はメトグルコに変更はないが、長期に服用するとビタミンB12の欠乏を誘発する。
     末梢神経炎や貧血があればビタミンB12を測定するが、定期的に調べる必要もある。
     メトグルコは腎機能低下でも処方可能
     eGFRが30以上なら安全で、30程度でも使用可能
     第二選択は色々であるが、コストパフォーマンスを考慮しなくてはいけない。
     意外に高い薬が多い。



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 3か月経過してもA1cが9以上なら、メトグルコの第二の薬剤を追加する。
心血管のリスクのある患者では、ジャディアンスとビクトーザが有効である。(この事は雑誌のNEJMに掲載されておりブログで以前にご紹介していますが、今回はアメリカのFDAも承認して、それを早くもガイドラインに取り入れています。他の同種の薬も同等の効果があるかは今後の課題としています。)
   
  インスリンの導入は躊躇すべきでないとしています。
 本院での採用薬で説明いたしますが、持続型インスリンの10単位から導入し始めて漸増していくが、目標に達成しない場合は、30ミックスに変更するか、持続型インスリンにビクトーザを追加する。
 この両者は特にどちらも非劣性であるが、30ミックスの方が体重が増加傾向であり、一方ビクトーザを追加する方は、低血糖は起こりにくいがコストが高い。
 ただし、何れも変更や追加をする場合は、糖尿病の経口薬は全て中止してから行う。(メトグルコはそのままで良いと考えています。)
尚、新しい30ミックス(持効型を含むもの)に関しては強化療法と比べて非劣性である。


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 4) 65歳以上の高齢者に対して
    その人の健康状態によって目標値を設定する。


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 私見)
  最新の研究結果を取り入れてのガイドラインです。
  かなり変更の部分も散見されます。
  十分に検討して、治療に役立てたいと思います。
  (若手の先鋭が作ったガイドラインだと思います。古い薬に対する説明が少なく、チョット寂しいです。)



 DIABETES−2017.pdf

 ucm53.pdf









posted by 斎賀一 at 21:33| Comment(0) | 糖尿病

2016年12月26日

腸内細菌についての展望

腸内細菌についての展望
 
The Human Intestinal Microbiome in Health and Disease
N Engl J Med 2016;375:2369-79



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  腸内細菌についての総説がNEJMに載っていましたので掲載いたします。


 1) 以前は培養で研究がなされていたが、最近は遺伝子工学での開発が活発となり、急激に解明され
    始めている。

 2) 細菌は単独では存在せず、色々な細菌が相互作用により、関与しながらホスト(生物体)に影響を
    与えている。しかもその細菌は地球上の地表に存在している。

 3) 数億年かけて、生物は腸内細菌に対して抵抗力を獲得してきた。
    当然その結果、共存を果たし、更にそれを利用する事により生命体は進化してきた。

 4) 新生児が出産する時に、母親の膣内の細菌が新生児に付与される。
    自然分娩の新生児の腸内細菌と母親の膣内及び腸内細菌は同じである。
    最初は新生児間での相違はないが、母乳を止める事により徐々に大人の組成に変化していく。
    1〜5歳にかけて大人へと変化するが、個々人での腸内細菌の組成は異なってくる。それには遺伝 
    と環境の両方が関与している。
    成人では腸内細菌の組成は安定しているが、年齢と伴にやがて個体差は無くなってきて同じように
    なり、しかも高齢者は不安定となる。

 5) 腸内細菌は色々な原因で変化する。
    分娩時の様式、抗生剤の服用、環境因子、個人の免疫機能、感染症、小児期のアレルギーや肥満
    など。

 6) 環境因子として、ハウスダストの中の細菌に暴露されることも重要な因子である。これは喘息や
    アレルギー疾患とも関与している。

 7) 食物繊維と野菜の食事は、短期的には腸内細菌に影響を与える。

 8) 腸内細菌は人体に長い間共存してきたので、当然健康と疾患に関係してくる。下記のように色々な
    疾病の原因に腸内細菌は関与している。




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  今後の発展が疾病の予防や治療に貢献されるであろう。




私見)
  まだ腸内細菌を医療に利用するには幾分の時間が必要なようで、黎明期のようです。
 巷で評判の善玉菌に関しての健康食品には私は引き気味です。
 数億年かけて達成した腸内細菌を乱さないように大事にしていく事が、今は臨床家にとって大切な時期
 と考えます。








posted by 斎賀一 at 21:21| Comment(0) | その他