2016年10月31日

乳癌健診のマンモグラフィーは過剰診断?

乳癌健診のマンモグラフィーは過剰診断?
 
Breast-Cancer Tumor Size, Overdiagnosis, and Mammography Screening Effectiveness
      N Engl J Med 2016;375:1438-47.


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 最近NEJMにマンモグラフィーが過剰診断している可能性を示唆する論文が掲載されました。
1975~2012年のデータですが、腫瘍の大きさと死亡率との関係は10年間の経過観察期間が必要になるため、マンモグラフィー導入前の1975~1979年と導入後の2000~2002年を比較したデータも併せて検討しています。

 簡略に結論的に記載しますと、マンモフラフィーにより乳癌の発見率が増加し、早期発見で大きな乳癌が少なくなったように見えますが、単に小さな乳癌の発見が増えただけで、しかもその小さな癌は生命予後に殆ど関係なく、生命予後が良くなったのは乳癌の治療の進歩に負う所が大きいとしています。


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 5cm以上の癌の発見率が低下しているように見えますが、実際は小さな癌の発見率が増えているので相対的に大きい癌が減っているようになっています。しかし大きい癌の件数には変化がありません。



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 乳癌の大きさが1cm以下の小さいものは、乳癌以外での疾病が死亡率に関与している。つまり小さな癌は生命予後に関係が少なく、進展して腫瘍が大きくなる確率は少ないとするデータです。



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 小さな癌の発見が増加している。
上の2つの表から推測すると、小さな癌の発見は過剰診断の可能性があるとしています。



私見)
  マンモグラフィーの有効性、小さな癌の悪性度、過剰診断といったカテゴリーを同じ土俵で捕らえるの
  はやや無理があり、注意する必要が有りはしないかと危惧します。
  むしろ小さな癌の生物学的性質や画像所見は今後の発展に期待したいと思いますが、過剰なマンモ
  グラフィーの期待も注意が必要です。










posted by 斎賀一 at 22:00| Comment(0) | 癌関係

限局性前立腺癌に対する10年間の追跡調査

限局性前立腺癌に対する10年間の追跡調査
 
10-Year Outcomes after Monitoring, Surgery,
or Radiotherapy for Localized Prostate Cancer
                  N Engl J Med 2016;375:1415-24
 

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 NEJMにPSA(前立腺の血液検査の腫瘍マーカー)で診断できた前立腺癌を積極的監視、手術、放射線療法の3群の治療に分けて、10年間予後を追跡調査しました。
 結論的には死亡率に差はなく、進展には手術と放射線療法に差はないが、積極的監視に悪化例がやや多くありました。

 1,645例がこの研究に参加しています。
死亡例は全体で17例

内容を観てみますと

  死亡例  積極的監視が  8例   手術が  5例    放射線療法が 4例
  転移例     〃      33例   〃    13例       〃     16例
  進展例     〃     112例   〃    46例       〃     46例



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私見)
 前立腺癌では、進行のスピードは他の癌と比較しますと緩徐です。
 十分に注意する積極的監視も、高齢者の場合は選択肢としてかなり有力です。
 
 Medleyに上手く解説されております。参考にして下さい。




前立腺がんは経過観察で十分?検査で見つかった人を10年追跡した結果 - MEDLEYニュース.pdf







posted by 斎賀一 at 21:34| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2016年10月29日

少量アスピリン服用による上部消化管出血の予防

少量アスピリン服用による上部消化管出血の予防
 
Similar fficacy of Proton-Pump Inhibitors vs H2-Receptor Antagonists in Reducing Risk of
Upper Gastrointestinal Bleeding or Ulcers in High-risk Users of Low-dose AspirinoseAspirin



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少量のアスピリンは抗血小板作用があり、脳血栓や心筋梗塞、狭心症の血栓予防に処方されていますが、胃潰瘍やそれによる胃出血の副作用が心配されます。
よって一般的には胃酸分泌抑制薬のH2ブロッカー(ガスターなど)かPPI(タケプロンなど)を併用します。
PPIの方が酸抑制作用は強いので効果は高いと想像されますが、そのために却っていろいろな問題が最近報告されています。  
(私のブログを参照ください)
 そこで今回の論文では、このH2ブロッカーとPPIを比較しています。

 以前にアスピリンを326mg/day以下服用していて、胃潰瘍か胃出血をおこしたことのある患者270名(ピロリ菌のいない事を確認)を対象に、その後アスピリン80mg/dayを1年間服用して、併用予防薬としてH2ブロッカーとPPIの両群に分けて経過観察しています。全員2か月毎に胃カメラで検査をしました。

胃出血の確率はPPIが0.7%,H2ブロッカーが3.1%でした。
胃潰瘍を含めると、その発生の確率はPPIが7.9%、H2ブロッカーが12.4%でした。
結論として、PPIとH2ブロッカーの予防効果はほぼ等しいとしています。
(対象がアスピリンで胃病変が起きたことのある人ですので、一般的な副作用出現率はこれよりかなり低いと想像されます。)



私見)
 どう考えてもPPIの方が有効に見えるのですが?
 H2ブロッカーで十分の症例もある事は証明されたようにも思われます。
 患者の層別化がここでも重要なようです。



Similar Efficacy of Proton-Pump Inhibitors vs H2-Receptor Antagonists in Red.pdf











posted by 斎賀一 at 15:34| Comment(0) | 循環器