2021年07月27日

感染後のワクチン接種;ハイブリッド

感染後のワクチン接種;ハイブリッド
 
Hybrid immunity
   COVID-19 vaccine responses provide insights
into how the immune system perceives threats



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 新型コロナに感染後の免疫(natural immunity)は、その後のワクチン接種の免疫(vaccine-generated immunity)によって補填されるとの報告があり、本院でも既に新型コロナに感染した人にもワクチンを1回は接種するように勧めてきました。
 今回、既感染者も2回接種することでさらに免疫を増強し、変異株にも有効との論文が掲載されていますのでブログします。


1) 獲得免疫には3パターンあります。
   Bリンパ球が造る抗体、Tリンパ球のCD4とCD8の3種類です。
   CD4とCD8は一般的には細胞免疫と言われており、その効果は少なくとも8か月は持続すると
   言われています。
   一方でB細胞が司る抗体、つまり液性免疫は徐々に低下して1年以内に消失してしまいます。

2) 研究によると、natural immunityは93〜100%も7〜8か月持続すると報告されています。
   しかし変異ウイルスに関してはやや低下しており、デルタ株では明白ではありません。
   ワクチンによる効果(vaccine-generated immunity)は最初の報告によりますと、デルタ株に
   対してもその有効性はあるとされています。

3) natural immunityとvaccine-generated immunityを組み合わせたhybrid immunityは
   一層の免疫を獲得するとの報告が今までにされています。
   つまりhybrid immunityはB細胞とT細胞の協同作用です。 (下記に紹介)
   B細胞が変異ウイルスに対しても認識するのは本質的に困難ではありません。
   ベータ株(南アフリカ株)以外の新型コロナに感染した人が、その後ワクチン接種をすることにより
   新たにベータ株に感染してもnatural immunityの場合の100倍も抗体を産生しています。
   なぜhybrid immunityで抗体が上昇したのでしょうか。
   液性免疫を司るB細胞も、記憶B細胞に分化し変異ウイルスに備えます。
   vaccine-generated immunityにより高品質な記憶B細胞が分化形成されると推測されます。
   そして分化した記憶B細胞に対してT細胞も対応します。
   リンパ組織の胚中心(germinal center)でその反応は起こります。
   hybrid immunityの場合に顕著に認められるのはB細胞による液性免疫ですが、その陰で記憶
   T細胞も分化しています。

4) 子供のころに水痘に罹患した人がその後に帯状疱疹の予防のためのワクチンのShingrixを接種
   すると抗体が更に高められることと似ています。
   アストラゼネカのワクチンの後にファイザーのワクチンを接種すると、ブスター効果が高められる
   のもこのためと推測しています。
   hybrid immunityは変異ウイルスの時代に光明を与えるかもしれません。






私見)
  すでに新型コロナに罹患した人には、ファイザーのワクチンを1回接種するよう勧めてきました。
  既感染者は2回目の接種で副反応が強いとの報告もあるため慎重を期していましたが、変異株の状況
  変化により本院も原則としてコンサルトをし、ご納得の上で2回接種を勧めて参ります。
  免疫については以前の私のブログをご参照ください。






本論文.pdf

Science Journals − AAAS 1.pdf

Science Journals − AAAS 2.pdf

ブログa.pdf

ブログb.pdf















posted by 斎賀一 at 21:52| Comment(2) | 感染症・衛生

2021年07月24日

WPWパターンとWPW症候群

WPWパターンとWPW症候群

患者さん用と院内勉強
 


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        内科臨床医サポートより
 
 最近、学童の方が検診の心電図でWPWの診断を受けて来院されました。
ネットで、WPWと調べるとほとんどがWPW症候群の記載内容です。
心電図で、特有なΔ波を認められればWPWパターンです。さらに不整脈、多くは頻脈発作を伴えば、
WPW症候群となります。WPWパターンは全年齢層に認められ、0.13〜0.25%の頻度です。
WPWパターンの中で、WPW症候群になる人はさらに少なく、2%より低いと言われています。
ただし、WPW症候群の人の10〜30%に心房細動を合併します。
心筋は、シンシチウムという合胞体で、自発的に活動電気を発生するペースメーカー細胞が
備わっています。
人は、発生の段階で房室結節の周辺の線維巣にシンシチウムの吸収不全が起きると、通常とは異なる
副伝導路が形成されてしまいます。有名なのがケント副伝導路ですが、その他の副伝導路もWPWの
原因となります。つまり、WPWは心筋の先天異常です。
副伝導路には、数種類あります。


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ピンクが正常の伝導路で、黒が副伝導路です。
この副伝導路により、心電図には異なった波形が生じます。WPWパターンには下記の3型があります。


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問題は、この副伝導路には順行性と逆行性がある事です。順行性は心房から心室に伝導しますが、
逆行性は心室から心房に伝導するポテンシャルがあります。
逆行性に心房に伝わった刺激は、心房内の発電部位(ダイナモ)を刺激し、頻脈を誘発します。


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副伝導路の60〜75%は、順行性と逆行性の両方を兼ね備えていますが、17〜37%は逆行性のみ
です。この逆行性のみの場合は、Δ波は生じません。
順行性伝導はある条件では制限され、徐脈になります。これが潜在性WPWです。
運動負荷をかければ頻脈となり、Δは消失します。このような潜在性WPWは、一般的に予後が良いと
されています。
13%に複数の副伝導路が合併しています。
予備的な知識は以上で、本題に入ります。


Uptodateを中心に纏めてみました。


 1) 無症状のWPWパターンが不整脈に進展するのは、3年以上の経過観察でも20%程度と
    言われています。特に、若い健康な人ではその傾向は低いようです。

 2) 危険因子の頻脈発作を経験した場合は、EPS(Electrophysiology Studyとは
    電気生理学的検査の事で、電極カテーテルという数ミリ径の細い管を、足の付け根や鎖骨下の
    静脈から、心臓に向かって数本挿入します。このカテーテルの先端には、小さな電極が付いて
    おり、これを心臓内壁に接触させると、心臓内の電気活動を詳細に得られる事が出来ます。
    食道を介する方法もあります。)を実施します。

 3) 頻脈発作のない無症状のWPWパターンの患者で、Δ波が間歇的に出現する場合は良性と
    見なしますが、常にΔ波を認める場合は、下記の手順でリスク評価をします。

      ・安静時心電図
      ・運動負荷試験により脈拍を増加させてΔ波の消失を調べる
      ・運動負荷試験が出来ない場合はホルター心電図を実施

    運動負荷試験などで、急にΔ波などの早期興奮(preexitation)が消失すれば、
    順行性伝導のみで、逆行性伝導はないと考えられます。従って、EPS検査はせずに経過観察
    となります。
    運動負荷で最大の脈拍にしても、Δ波が持続するからと言ってハイリスクとは限りませんが、
    EPS検査が必要となります。
    EPS検査まで進んだ無症候性WPW患者の224人中76人(34%)に、その後に頻脈発作などの
    不整脈を認めています。
    その場合にはアブレーション治療が必要となります。その効果は5年間で、不整脈の消失は
    コントロール群と比較して、7%対77%でした。

 4) しかし、EPS検査でハイリスクと診断された人で、生命予後に危険な不整脈の発生頻度は、
    たったの2%でした。従って、EPS検査がリスク評価の金科玉条かどうかは分かっていません。

 5) 無症候性のWPWパターンでは、特に35〜40歳は経過観察でよいと思いますが、
    若い学童児の場合はEPS検査も考慮に入れるべきとしています。
    非侵襲的検査もあり、保護者と十分なコンサルトが重要です。


他の文献より抜粋します。



  ・検診ガイドラインによりますと


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  ・ドクターサロンより
   

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  ・雑誌小児科より


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最後にuptodateのストラテジーを掲載します。
 


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私見)
WPWパターンの多くは、心配ないと理解してください。
個別のコンサルトが保護者の方と必要です。
ドクターサロンに、WPWパターンについての概要が丁寧に記載されていますので、
下記にPDFを掲載します。
WPWの心電図読解もかなり難解です。出版元には恐縮ですが、抜粋をPDF化して掲載しますので
皆さんは改めて購入してください。



参考文献
・心電図再入門  南江堂
・雑誌小児科 小児科Vol. 55 NO.l 201 小児循環器領域
・日本内科医会会誌 2017年9月号 学校心臓検診ガイドライン
・検診資料
・雑誌mediscape 出典不明
・その他 ネットより合成してPDFを作っています。



1 小児のWPW症候群.pdf

2 WPW 図譜.pdf

3 心電図「再J入門.pdf

4 これってWPW症候群?1.pdf

5 これってWPW症候群?.pdf







posted by 斎賀一 at 20:11| Comment(0) | 循環器

2021年07月19日

1回目はアストラゼネカで2回目はファイザー

1回目はアストラゼネカで2回目はファイザー
 
Immunogenicity and reactogenicity of BNT162b2 booster
In ChAdOx1-S-primed participants (CombiVacS):



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 テレビなどで、1回目はアストラゼネカで2回目はファイザーのワクチンを用いると効果があるとする
コメントが散見されます。
日本でそのまま適応すると、若干の齟齬が生じる心配があるのでブログしてみます。


本論文を纏めますと

1) 多くの国では、2021年4⽉初めにアストラゼネカの1回目の接種を受けた多くの⼈が、ワクチン接種
   計画を完了できませんでした。
   これはヨーロッパの保健当局が、血栓症のリスクが評価されるまで2回目の接種を中⽌したため
   です。
   この中⽌により、当局は異種混合ワクチンの接種スケジュールを使⽤する事となりました。
   結果的に1回目でアストラゼネカのワクチンを接種された人は、2回目はファイザーのワクチンを接種
   されています。

2) スペインからの報告です。
   本研究では、既に8〜12週間前にアストラゼネカのワクチンの1回目接種を受けた人を対象に、
   SARS-CoV-2感染歴のない18〜60歳の成人を、ファイザーのワクチン0.3mL単回筋肉内投与群
   (介入群)と、そのまま2回目の接種をしない経過観察群(対照群)に2対1の割合で無作為に振り
   分けています。

3) 主要評価項目は、14日目の免疫獲得として、スパイクタンパク質および受容体結合ドメイン(RBD)
   の免疫測定で評価しています。さらに抗体の機能は偽ウイルス中和アッセイを用い、細胞性免疫
   反応はインターフェロン-γ免疫アッセイを用いて評価しました。
   安全性の評価項目は、7日目の局所および全身の有害事象を評価しています。

4) 2021年4月24日〜30日に、スペインの5つの大学病院で676例が登録されました。
   (介入群450例、対照群226例)平均年齢は44±9歳、女性が382例(57%)、男性が294例(43%)
   で、663例(98%)が14日間の試験を完遂した。(介入群441例、対照群222例)

5) 結果は




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   新型コロナウイルスのスパイク蛋白に対する抗体および中和抗体も、オレンジで示した介入群で
   上昇しており、細胞免疫も確立されています。
   さらに受容体結合ドメイン(RBD)と中和抗体とは比例しています。
   介入群(ファイザーのワクチン接種を2回目に行う)で明白に抗体が形成された結果です。

6) 介入群で7日間に収集された有害事象1,771件のうち、ほとんどは軽度(1,210件、68%)
   または中等度(530件、30%)でした。重篤な副反応はありませんでした。





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7) 考察
   本研究では、2回目の接種の間隔は8〜12週とアストラゼネカの最初の規定(4週間)からは離れて
  いますが、2つの論文によると、アストラゼネカのワクチンは間隔が長い方が抗体が形成されやすい
  とのデータもあり、2回目の接種が遅れたのは倫理的に問題はないとしています。(以前のブログ参照)
  さらにファイザーのワクチン接種により細胞免疫が十分に形成された利点も現れています。
  従来のファイザーのワクチン接種でも、2回目に細胞免疫が確立されているエビデンスと符合します。
  以前の報告によりますと、異種混合ワクチンの方に副反応が強いとの指摘もありましたが本研究では
  参加者が比較的若いこともあり、副反応の発生率は低くなっています。
  女性の方が副反応は高い傾向ですが、逆に抗体は女性の方が高く形成されています。
  抗体が高い原因として、2回目接種の間に不顕性感染があったかもしれないと仮説を立てています。
  (が、それはないでしょう。)







私見)
   本研究にはかなりのバイアスが掛かっています。
   対象者は、1回目のアストラゼネカのワクチンで重い副反応がなく、且つ2回目の接種を希望した
   人です。
   それでもアストラゼネカとファイザーワクチンの混合接種の有効性が証明されました。
   ただ日本の今、誰がアストラゼネカの鈴をかけるのでしょうか。
   アストラゼネカのワクチンによる血栓症治療に対しても、進展しているようです。
   ワクチンの安定供給の意味でも期待しています。







本論文.pdf

ブログ1.pdf

ブログ2.pdf

ブログ3.pdf

ブログ4.pdf

ブログ5.pdf




















posted by 斎賀一 at 20:06| Comment(0) | 感染症・衛生