2020年06月01日

前例のないウイルス・新型コロナ

前例のないウイルス・新型コロナ

 
Asymptomatic Transmission, the Achilles’ Heel
of Current Strategies to Control Covid-19



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 世界の多くの研究者が、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じ程度と高をくくっていま
した。私もそう信じてブログを書いていましたが、このウイルスの不気味さが分かるにつれて、対策も変更していかなくてはならないと多くの人が感じています。

 総説的な論説が雑誌NEJMに載っていましたので、纏めてみます。


1) 新型コロナ感染が世界に広がり始めた時に、研究者は2003年に流行したSARSの場合を想定して
   症状を基盤とした検査を実施し、隔離政策を執りました。(いわば日本方式もその一部です。)
   当初はSARSと新型コロナは似ており、感染形式は飛沫感染で潜伏期間は平均5日とされました。
   しかし大きな違いが分かり始めました。
   つまり、初期対応によりSARSの場合は地域的な感染で、しかも8か月で終息しました。
   しかし新型コロナは現在5か月を過ぎていますが、未だに世界中に広がっています。

2) 新型コロナの特徴は、無症状の時点から既にウイルスを放出しています。
   その程度は、症状が顕著になる上気道感染症状の段階と同じとされています。

3) SARSでは下気道でウイルスは増殖し、ウイルスの放出は症状が発現してから平均で5日間です。

4) インフルエンザは無症状の段階では上気道からのウイルスの放出は殆ど無く、症状が発現してから
   でも放出の期間は短い傾向です。(現に5日間で登校を許可しています。)
   しかも症状の軽い患者からの感染は低いと考えられています。

5) あるアメリカにおける高度看護施設での調査では、76人の入所者を対象にPCR検査を実施しま
   した。
   48人(63%)が陽性でその中の27人(56%)は無症状でしたが、やがて24人に症状が発現して
   います。
   更にこの24人は、無症状の段階でウイルスを1~6日間放出していました。
   最終的に57人が陽性となり15人(26%)が死亡しています。
   入所者に認知症が含まれている可能性はありますが、無症状の入居者からの感染がある事が重要
   です。

6) アメリカでは高度看護施設の一割に新型コロナの発生(outbreak)を認めています。
   入所者の定期的なPCR検査が必要です。その場合はクラスター対策ではなく、症状の有無に関係
   ない実施が肝腎です。又、当然ながら職員の繰り返しのPCR検査も必須です。

7 )社会の封鎖解除の段階では、検査体制の整備が必要です。
   前例のないウイルスに対しては、前例のない対策が求められます。






私見)
 Abeさんは大見えを切って言いました。  「政治は結果が大事だ。」 
 結果は我々が判断します。論語でも言っています。
 「指導者は過ちや嘘がばれたら謝ればいい。大事なのは変わり身の早さだ。」
 アベのマスクや専門家会議での議事録が無い事にギャーギャー言うつもりはありませんが、成功体験は
 往々にして不成功に繋がらないでしょうか。

 私の信条 「指導者は過ちは直ぐに認め、朝令暮改」
 私の尊敬する人物 小早川秀秋

 本院においては新型コロナの検査がどうなるか予測が出来ません。
 本院の検査体制を構築し、インフルエンザや発熱疾患も見落とさないよう頑張りましょう。






本論文.pdf











posted by 斎賀一 at 18:50| Comment(1) | 感染症・衛生

2020年05月29日

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その2

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その2
 
Nasal ACE2 Levels and COVID-19 in Children
 


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 前のブログ、その1で紹介しました論文の論説が同じJAMAに載っていますので、掻い摘んで纏めて
みます。


1) 小児の新型コロナ患者(index case)との接触の機会は、30~49歳と比較すると同じか若干多い
   傾向ですが、60歳と比較するとやや少ない傾向です。
   この事から言える事は、小児が殊更に新型コロナ患者との接触が少ないから罹患率が低いとは言え
   ない様です。

2) 上気道である篩骨洞の外科手術標本を調べると、ACE2は1.3%しか表現していませんが、ACE2と
   TMPRSS2を同時に表現しているのは0.3%でした。

3) その1の論文からも、小児では鼻の単一細胞でのACE2の表現は少なく、新型コロナの感染の頻度
   が低い事を裏付けています。

4) ACE2は新型コロナの感染機会を増加させる悪玉の印象ですが、本来は以前のブログでも紹介
   しましたが炎症を消褪させる善玉の働きをします。
   下気道でのACE2の低下は、肺組織の障害を増悪させてしまいます。
   その1の論者は、鼻腔のACE2の低下がそのまま下気道には当てはまらないとしています。
   下気道でのACE2の調整は(regulation)色々であるとしています。
   今後は小児における下気道でのACE2の表現を調べる事が重要と思われる。
   また、鼻腔でのACE2を低下させることが治療に直結するかもしれない。






2 鼻 ACE-2 小児.pdf










posted by 斎賀一 at 20:29| Comment(0) | 感染症・衛生

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その1

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その1
 
Nasal Gene Expression of Angiotensin-Converting
Enzyme 2 in Children and Adults


    
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 子供には新型コロナが感染しにくく重症例が少ないとの報告がありますが、今回雑誌JAMAに上気道、この場合は鼻の粘膜のACE2のレベルに注目した短報がありましたのでブログしてみます。


1) 本研究は、喘息のマーカーを鼻の粘膜から調べる目的で始められています。
   2015~2018年間の4~60歳にかけて、鼻の粘膜をブラッシュで採取しRNA安定液に保存して
   ありました。
   305症例です。
   鼻の粘膜におけるACE2発現量を、下記の年齢別に調べました。
   ・10歳以下 ・10~17歳 ・18~24歳 ・25歳以上の4グループです。

2) 結果は下記のグラフのとおりで、明らかに年齢により直線的に増加しています。
   この結果は喘息の有無に関係がありませんでした。




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3) 若い小児では鼻の粘膜にACE2の発現が少ない事から、新型コロナの侵入が抑えれているとして
   います。





私見)
 そうありたいものです。
 今季のインフルエンザには万全を期しましょう。







1 小児 鼻 ACE2.pdf












posted by 斎賀一 at 19:46| Comment(0) | 感染症・衛生