2018年06月16日

糖尿病治療薬・メトグルコと乳酸アシドーシス:その2

糖尿病治療薬・メトグルコと乳酸アシドーシス:その2
 
Association of Metformin Use With Risk of
Lactic Acidosis Across the Range of Kidney
Function A Community-Based Cohort Study



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 メジャーな雑誌のJAMAより、腎機能のeGFRが30以上あればメトグルコの投与は可能との論文が
出ました。


纏めてみますと

1) メトグルコは安価な薬剤ですし、服用による体重の増加もなく心血管疾患に対しても有効に作用
   します。問題点としては、腎機能低下の患者には注意が必要とされていました。
   しかし最近では、アメリカのFDAから使用時にeGFRが45以下の場合は適用注意で、30以下の  
   場合は禁忌とする緩和な方向のガイドラインが出ています。それにやや反論するガイドラインも
   出ていますが、腎機能低下患者を対象にした十分な研究はあまりなく、エビデンスが無いのが実情
   です。

2) 本論文では、U型糖尿病患者の75,413人を登録しています。
   平均年齢は60.4歳  51%が女性
   約半数の34,095人が登録時にメトグルコを服用しており、13,781人が、経過観察中にメトグルコを
   服用しています。コーホ研究より複製したデータではSU薬は14,439人でした。
   (下記のsuppleを参照)  経過観察は5.7年間です。
   入院するような乳酸アシドーシスが2,335名に発生していました。

3) time-dependentでもメトグルコの服用と乳酸アシドーシスの関連はありませんでしたし、危険率は
   0.98です。
   腎機能のeGFRが30以上では、乳酸アシドーシスとは関連性がありませんでした。
   eGFRが30以下では、危険率が2.07でした。

4) 以上より、全てではないが多くの糖尿病患者に慢性腎疾患(CKD)があっても、メトグルコを服用
   できるとしています。
   メトグルコの多面的有効性を重視して、eGFRが30~44でもSU薬よりもメトグルコの方を選択すべ
   きとしています。






私見)
 新しい効果のある糖尿病薬も登場しています。
 腎機能のeGFRが45以下になっている場合や、メトグルコが服用できない患者さんにとっては選択肢が
 多くなったとのコメントに説得がありました。




JAMA.pdf

jama supp1_prod.pdf

糖尿病治療薬.pdf
















posted by 斎賀一 at 14:51| Comment(0) | 糖尿病

2018年06月15日

糖尿病治療薬・メトグルコと乳酸アシドーシス;その1

糖尿病治療薬・メトグルコと乳酸アシドーシス:その1
 
Risk of lactic acidosis in type 2 diabetes patients
using metformin: A case control study



0615.PNG



 その昔、メトフォルミン製剤は乳酸アシドーシスを起こすので危険視されていました。
しかし、その中でもメトグルコは安全で、注意して処方すれば乳酸アシドーシスの頻度は低いとされ、メトフォルミンのルネッサンスとまで言われ、今では糖尿病治療の第一選択薬です。
更に最近では腎機能のe-GFRの50までは安全と言われています。

 今回、メトグルコと乳酸アシドーシスの関係について文献が2つほどありましたので掲載します。
先ずは庶民的な雑誌Plos ONEからの論文を纏めてみました。


1) U型糖尿病患者10,652名を登録して、乳酸アシドーシスで入院している人を解析しました。
   2009~2013年まで調査しました。
   乳酸アシドーシスの診断基準として、PH<7.35 and 乳酸≧2.0mmol/Lとしています。
   平均年齢は74歳   51.5%が男性

2) 163名が乳酸アシドーシスで入院しています。
   391人/100,000人/年 の頻度でした。
   コントロール群として年齢、性別が同じ集団を3,834名登録しました。
   チャールソンスコアー(合併症の重症度のスコアー化で、下記のPDFを参照)が2以上を調べてみま
   すと、乳酸アシドーシスの群では63.8%で、コントロール群では24.7%でした。つまり重い基礎疾患
   があれば乳酸アシドーシスになる頻度が高く、メトグルコの服用とは関係が無さそうです。
   メトグルコと乳酸アシドーシスの関係の危険率は0.79と低く、関連性はないと結論付けています。
   以前の論文では腎不全と心不全が基礎疾患として指摘されていましたが、本論文では腎機能は独立
   した因子で、呼吸器疾患と菌血症を含めた感染症が乳酸アシドーシスの危険因子としています。

3) 以前の乳酸アシドーシスとメトグルコの関連性を指摘している論文では、本論文と乳酸アシドーシス
   の基準が異なっており、乳酸アシドーシスの診断が入院時や退院時などでバラつきがある事も指摘
   しています。







私見)
 本院での乳酸アシドーシスの診断ツールは、以前のブログをご参照ください。
 小心者の私としましてはそれでも心配ですが、下記のPDFの表を見ると乳酸アシドーシスを起こした
 ケースの中でメトグルコを服用していないケースが多くあり、別の視点で注意が必要と感じました。





Risk of lactic acidosis in type 2 diabetes.pdf

本論文より (2).pdf

チャールソン.pdf









posted by 斎賀一 at 20:13| Comment(1) | 糖尿病

2018年06月14日

原発性胆汁性胆管炎に対するベザフィブラート(ベザトールSR)の効果

原発性胆汁性胆管炎に対するベザフィブラート(ベザトールSR)の効果
 
A Placebo-Controlled Trial of Bezafibrate in Primary Biliary Cholangitis
  n engl j med 378;23 nejm.org June 7, 2018



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 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、進行が緩徐ですが肝硬変に進展する可能性があり、30歳以上の女性に多い疾患です。病因は自己免疫性疾患が考えられています。症候性(sPBC)と無症候性(aPBC)に分かれます。皮膚掻痒症、黄疸、腹水などの症状がありますが、無症候性のまま数年が経過する場合も
あります。
ビリルビンが2mg/dl以上をs2PBCと呼び、以下をs1PBCと言います。
検査ではALP,γ-GTPが上昇し、抗ミトコンドリア抗体が90%陽性です。

治療としてはウルソが基本ですが、効果が乏しい時は以前より脂質異常症(特に中性脂肪)の薬剤であるベザトールSRが、裏ワザとして使用されていました。
 今回、NEJMよりウルソとベザトールSRの併用が進展を遅らせるばかりでなく、症状の改善に繋がるとする論文がでました。


纏めてみますと

1) 2012~2014年にかけて、年齢は18歳以上のパリ基準 II (下記PDF参照)でウルソによる治療
   効果が不十分であった100 例を、ウルソの継続投与に加え、ベザトールSR 400 mg/日を追加
   投与する群(50 例)とプラセボを投与する群(50 例)に無作為に割り付けて、24ヵ月の時点
   での転帰を調べました。
   対象は95%が女性で、平均年齢は53歳でした。しかも54%が進行期でした。
   (組織学的にbridgingからcirrhosis。パリ基準では24カ月の経過でウルソの効果を判定として
    いますが、本論文では6か月以上の経過での判定となっています。詳細は下記のPDF)

2) 主要転帰として、総ビリルビン値,アルカリホスファターゼ値、アミノトランスフェラーゼ値、アルブ
   ミン値、プロトロンビン指数(プロトロンビン時間から算出される指標)が正常であることと定義して
   います。

3) 主要転帰つまり正常化は、ベザトールSR群の 31%で発生し、プラセボ群では 0%でした。
   (当たり前で、効果が無い人を選んだので0%です。)
   副作用として、腎機能のクレアチニン値はベザトールSR群ではベースラインから 5%上昇し、プラ
   セボ群では 3%低下していました。筋肉痛がベザトールSR群の 20%とプラセボ群の 10%に発生
   していました。
   腎機能、糖尿病、高血圧の基礎疾患に気を付ける必要があるとしています。

4) ベザトール作用機序としては、抗脂質作用、ビリルビン産生抑制、免疫抑制作用、肝内の炎症促進
   サイトカインの抑制、PPAR-δ agonistic effects(これの胆汁鬱滞の改善効果)が想定されて
   います。

5) ウルソとベザトールSRを併用する事で、検査結果の改善が1/3に認められました。





私見)
 PBCは意外に多い疾患です。
 再度、ベザトールSRの採用を本院でも検討します。




本論文より.pdf










posted by 斎賀一 at 13:59| Comment(0) | 消化器・PPI