2024年02月26日

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)と心房細動

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)と心房細動

<短 報>
Mineralocorticoid receptor antagonists and atrial fibrillation:
a meta-analysis of clinical trials



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 高血圧治療薬のMRAs(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)は、心房細動に有効との論文が
出ています。以前より指摘されていましたが直近での論文です。

本院ではスピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)
エプレレノン(商品名:セララ)
エサキセレノン(商品名:ミネブロ)を使用しています。
Naの再吸収とKの排泄を抑えることから、カリウム保持性利尿剤ともいわれます。
以前は高カリウム血症が問題となり処方が控えめになった時期もあるため、降圧薬のARBとの
併用にも注意勧告が出ていましたが、最近では復活の機運です。
治療抵抗性の高血圧にも、裏技として少量のMRAsを処方します。


1) 本論文はMRAが心不全と心房細動の治療および予防に、いかに効果があるかを検証して
   います。

2) 2023年3月24日までに集計してランダマイズした7つの論文のメタ解析です。
   20,741人を対象としています。平均年齢は65.6歳です。
   コントロール群と比較してMRA群は、心不全患者の死亡と入院率のリスク比が0.81
   でした。
   心不全でない患者では、死亡と心不全の入院率のリスク比は0.84です。
   心不全患者で心房細動を有している場合に、MRA群はコントロール群と比較してリスク
   比が0.95でした。
   20の研究から21,791人(平均年齢は65.2歳)のPooled detaによると、心房細動の
   経歴有無に関わらず心房細動発生のリスク比を、0.76に減少させています。
   (つまり、24%の減少です。)

3) MRAは中等度ではありますが、心房細動の発生と再発を抑制しています。






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私見)
 心不全と心房細動のリスクのある人(発作性心房細動)には、血清カリウムに注意しながら
 MRAsを少量かぶせるのも良いかもしれません。






MRA Mineralocorticoid receptor antagonists and atrial fibrillation_.pdf












posted by 斎賀一 at 20:51| 循環器

2024年02月22日

シェーグレン症候群における間質性膀胱炎

シェーグレン症候群における間質性膀胱炎

I
nterstitial Cystitis in Sjögren’s Syndrome
[n engl j med 390;6 nejm.org February 8, 2024]



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 シェーグレン症候群における間質性膀胱炎の症例報告がありましたので、ブログします。
症例は66歳女性です。シェーグレン症候群に罹患していました。
下腹部痛と尿意切迫が1か月前より続き、受診しています。
1年前にSicca症候群を呈して、リウマチ科にてシェーグレン症候群の診断を受けています。
【"sicca syndrome"(シッカ症候群)は、単に口や目の乾燥感を含む症状のある状態を指す
 非特異的な用語です。この症状は、シェーグレン症候群だけでなく、他の病気や医学的状態
 にも関連しています。しかし、一般的には "Sjögren's syndrome" が "sicca syndrome" の
 一部として考えられることが多いです。】
診察時に恥骨上の疼痛と、指骨間関節痛が認められています。
尿沈渣では軽度の血尿と白血球を認めていますが、尿培養では細菌は陰性です。
CTでは膀胱壁の肥厚と両側の水腎症の所見ですが、尿管結石はありません。
膀胱の生検ではリンパ球と組織球の浸潤があり、一部ではリンパ濾胞形成も認められます。






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            (膀胱壁の肥厚が認められます。)





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            (両側の腎盂の拡大が認められます。)





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    (赤い細胞が形質細胞でしょうか?右の方にリンパ濾胞形成があります。)


今日の臨床サポートから調べますと

間質性膀胱炎とは、原因不明の膀胱痛を伴う非細菌性萎縮性膀胱炎である。
女性に多く(9割)、男性は慢性前立腺炎を合併することがある。
頻度は人口の1%、遺伝素因は不明だが、食事習慣(酸、カリウム、刺激物)など環境因子が
症状増悪因子となっている。
病態は尿路上皮の尿の透過性の亢進に伴う間質の炎症で、グリコサミノグリカン層(GAG)の
機能異常と肥満細胞の増多が認められる。
尿に対する膀胱の知覚過敏であり、免疫学的に亢進した病態である。
治療に奏功しない6週間以上続く膀胱の不快感、圧迫感、疼痛膀胱を認め、麻酔下に経尿道的に
15分ほど膀胱を充満させて、膀胱鏡下に膀胱粘膜を観察し新生血管の集簇などの異常粘膜を
認める場合診断する。

 食事療法:
 尿の酸度やカリウムが多いことが症状悪化原因になる。
 そのため、尿を酸性にしやすい発酵品(チーズ、納豆、ヨーグルト)・柑橘類や、カリウムが
 多いグレープフルーツジュース・バナナ・生野菜や、尿中の刺激物となるコーヒーやキムチ、
 香辛料を避ける。
 膀胱訓練:
 水分をよく摂り薄い尿をなるべくたくさん膀胱に溜めること(膀胱訓練)は、一時的に症状を
 悪化させるが、徐々に蓄尿量を増やし痛みが軽減する。
 薬物療法:
 Th2サイトカイン拮抗薬のsuplatast tosilate(IPD)や三環系抗うつ薬、酸性尿改善薬のクエン
 酸塩であるウラリット、鎮痛薬であるプレガバリン(リリカ)などが症状緩和に有効なことが
 ある。
 想起:
 膀胱炎を繰り返し、始めは抗菌薬が効いていたが徐々に無効になる。
 原因不明で、精神安定薬も頻尿改善薬も無効な場合、想起する。
 食事やストレスなど生活環境で膀胱症状が悪化したり改善したりする場合、想起する。






私見)
 尿意切迫など個人的にも参考になりますが、危険と隣り合わせです。
 注意する食事も、私の嗜好品とダブります。













posted by 斎賀一 at 11:28| 泌尿器・腎臓・前立腺

2024年02月20日

ベーチェット症候群

ベーチェット症候群

Behçet’s Syndrome
[N Engl J Med 2024;390:640-51.]



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 ベーチェット病は症候群として捉えているようです。
雑誌NEJMより総説が載っていましたので、ブログしてみます。
ベーチェット症候群は、慢性の寛解と再発を繰り返す全身の炎症性疾患です。
従って症状も多岐に亘ります。病態はあらゆるサイズの動脈、静脈が侵されるため、それによる
分類がされていますが、原因としては遺伝子的ファクターが考えられています。
(以下ベーチェットと記載します。)

1) 歴史的には、本症候群はトルコを主体とするシルクロードに沿って見られた疾患でしたが
   現在では世界全体で発生しています。
   発症段階ではあるポピュレーションに集中しています。
   発症年齢は15〜45歳で平均30歳ですが、年齢と伴に減少します。
   男性の方が重症化しやすい傾向です。

2) 細菌、ウイルスそれらの産物が誘因となり炎症を引き起こし、結果として組織ダメージと
   なります。その他にはヒスタミン放出食品の柑橘系の果物、ナッツ類、チーズの関与も
   想定されています。口腔内の衛生状態、ストレスもトリガーと考えられています。
   ベーチェット症候群は、自己免疫と自己炎症の両方の特徴があります。

3) (自己免疫の面はザックリと省略し、下記の図譜を添付します。)

4) 臨床症状
   ・皮膚及び粘膜病変
    再発を繰り返す口腔内潰瘍が、ベーチェットの特徴です。
    続いて性器の潰瘍、丘疹膿疱性病変、および結節性皮膚病変があります。
    1/3は全経過を通じて皮膚と粘膜病変だけです。しかし口腔内の潰瘍は60%に見られる
    一般的なアフター性潰瘍と鑑別が出来ません。PFAPA症候群(回帰熱、アフター口内炎
    咽頭炎、頚部リンパ節炎)を思わせる場合もあります。
    性器潰瘍は殆どの場合に瘢痕病変です。しかも口腔潰瘍よりも持続的で、深く、大きい
    傾向です。病変はほとんどが陰嚢または陰唇に現れます。
    皮膚の丘疹性病変は、外観も組織学的特徴も尋常性ざ瘡と区別がつきません。
    臨床的には脂肪組織炎は結節性紅斑に似ており、組織病理学的により好中球性血管炎の
    存在が明らかになる場合があります。
   ・関節病変
    ベーチェットの約半数に関節病変が認められます。殆どは変形を伴わず、単関節で
    自然に軽快します。最初は膝、足関節、手首、肘が多いです。
    にきび病変、関節炎、腱鞘炎が一緒になっている場合があります。
    仙腸関節や脊椎の病変は稀です。
   ・眼病変
    50%の方に発症後平均2年で眼症状が現れます。その内70%が両側です。
    (詳しくは今日の臨床サポートから抜粋し下記に記載します。)
   ・血管病変
    15〜40%に色々なサイズの静脈、動脈に病変が起きます。
    肺塞栓は稀です。門脈(Budd-Chiari)、上大静脈、下大静脈、脳静脈洞にも認め
    られます。5%が心血管に起きます。
   ・神経系
    30%以下です。視神経炎、頭痛、片麻痺、痙攣です。
    神経ベーチェットは再発を繰り返す進行性です。
   ・消化器系
    5%以下ですが、アジアでは20%見られます。
    胃腸の潰瘍病変ですが、炎症性腸疾患との鑑別は難しいです。

5) 鑑別診断(下記PDF参照)
   遺伝子解析のHLA-B51の診断は補助的です。(保険適応がありません。)
   診断基準がありますが、これも完全でなくrule outは出来ません。

6) 予後
   若い人の方が重症化率は高いようです。
   血管病変のベーチェットは死亡率が高くなります。






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今日の臨床サポートから抜粋してみます。

 ・ベーチェット病ではHLA-B51保有率が高く(50〜70%)、発病にHLA-B51やこれに連鎖
  する因子の役割が重視されている。日本人の場合、健常者でも15%程度で陽性になるが、
  それでもなお、日本人のHLA-B51保有者におけるベーチェット病に罹患する相対危険率は
  7.9と高い。
 ・(診断基準は下記のPDFを参照)
 ・針反応:比較的太い針を用いる。
  針反応とは、20G針を用いて前腕内側に3カ所程度、45度の角度で3〜5mm挿入し、48時間
  以内に紅斑性丘疹または囊胞の形成を認めるかどうかを評価する検査である。
  診断基準での参考項目に挙げられている所見であり陽性所見はベーチェット病を示唆する。
  なお、浸潤のない紅斑は陰性と判断する。  
 ・眼症状:
  炎症が前眼部のみに起こる虹彩毛様体炎型と、後眼部に及ぶ網膜ぶどう膜炎型(眼底型)に
  大別される。
  一般的に眼の充血を確認した場合には、眼の隅の方ならば疲れ眼、結膜炎など病的意義が
  少ないものと考えられ、瞳の周囲の充血は虹彩炎など病的意義を考慮する。
  ベーチェット病は通常、両眼を侵されることが多く、時間の単位で症状が増悪寛解する
  発作性に出現し、結膜充血、眼痛、視力低下、視野障害などを来す。
  虹彩毛様体炎型では、前房蓄膿が観察されることがあり、ベーチェット病に特徴的所見で
  ある。
  網膜ぶどう膜炎型のほうが視力予後は悪く、若年男性、HLA-B51陽性者で重篤化しやすい。
  また、眼後部の病変は眼痛や充血などを自覚することなく、潜在的に進行して失明すること
  があるため、基本的には症状を認めなくても、眼科医に相談をする必要がある。
  ベーチェット患者の約60%に眼症状、50%に後部ぶどう膜炎、20%に失明があると集計
  されている。





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 (目の充血で瞳の周囲、眼脂がないときはベーチェットを疑う必要がありそうです。)






私見)
 のど元過ぎればの如く、忘れた頃に稀な疾患は現れます。
 診断に集中するとは、常に稀な疾患を念頭に置くことかもしれません。










厚生労働省ベーチェット病診断基準.pdf










posted by 斎賀一 at 19:53| その他