2019年06月17日

閉塞性肺疾患(COPD)における吸入剤

閉塞性肺疾患(COPD)における吸入剤 LABA+LAMAとLABA+ICSの比較
 
Comparative Effectiveness and Safety of LABA-LAMA vs
LABA-ICS Treatment of COPD in Real-World Clinical Practice



0617.PNG



 以前の私のブログ(COPDで検索)をご参照ください。
(気管支拡張には交感神経が関与しています。その反対の副交感神経を抑制すれば、間接的に気管は
拡張します。交感神経を刺激する方が、副交感神経を抑制するより効果は高い事が予測できますが、交感神経の刺激は心臓をも興奮させてしまう懸念があります。また、現在の交感神経刺激薬は気管支に特化していると言われています。長期に持続して作用する交感神経刺激薬がLABAで、副交感神経抑制薬がLAMAです。)
 ブログで紹介した以前の論文と同様の結果ですが、今回の論文でも再確認してみます。


1) COPDの治療は、ガイドラインでLABAとLAMAのどちらかが最初に勧められていますが、コント
   ロールが不良の時には更にstep-upして、LABA+LAMAを推奨しています。
   今回の論文ではLABA+LAMA とLABA+吸入ステロイドとの比較研究です。

2) 2002~2015年に懸けて、55歳以上(平均72歳)のCOPD患者を登録しています。
   LABA+LAMAの群が1,977名で、LABA+吸入ステロイドの群が同数の1,977名です。
   両群とも平均で3か月間は初期の治療を継続しています。
   1年間の経過観察で、中等度以上のCOPD急性増悪の頻度(ステロイドの全身投与か入院を
   増悪と定義)を主要転帰としています。

3) LABA+LAMAはLABA+吸入ステロイドと比較して、中等度の急性増悪の危険率は1.04で、重症
   の危険率は0.94でした。
   入院を必要とする肺炎の危険率は0.66でした。(LABA+LAMAが5人/100人でLABA+吸入ステ
   ロイドが8人/100人)

4) 急性増悪の予防効果は両群で同程度でしたが、肺炎の危険率は LABA+LAMA に比べてLABA+
   吸入ステロイドの方が悪い結果でした。





私見)
 COPDの治療でstep-upの時には、LABA+LAMAが有効との結果です。
 喘息を合併していたり、好酸球増加がある事はステロイド吸入を追加する選択肢もあります。
 そのような時には最近発売になっています LABA+LAMA+吸入ステロイドの3つの合剤も利便性が
 ありそうです。
 但し若干の肺炎の合併にも注意が必要となります。









1 Treatment of COPD.pdf

2 気管支拡張薬外用剤型一覧(1).pdf

3 テリルジー 3成分配合.pdf












posted by 斎賀一 at 21:16| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2019年06月15日

造影剤による急性腎障害

造影剤による急性腎障害
 
Contrast-Associated Acute Kidney Injury
  N Engl J Med 2019;380:2146-55.


0616.PNG
 


 造影剤における腎障害に関しては、直接的及び間接的に腎臓に作用すると考えられています。

今回雑誌NEJMより総説が載っていましたので読んでみました。
但し残念ながら知見が混とんとしていて、読んでいても更に迷路に入ってしまったようで、すっきりと理解
できませんでした。しかし流石はNEJMで、そんな中で光を放つ内容もあり、私なりに曲解し箇条書きに
して纏めてみました。

1) クレアチニン値は、腎障害の程度の指標にならない事がある。
   薬剤の影響と体液量の変化によって、クレアチニン値は変動するからである。
   わずかな増加でも腎障害に繋がる事もあれば、低下が悪化のサインである事もある。
   兎も角も変動に注意する必要があるが、如何に判断するかは今後の課題である。

2) 検査前の患者の腎機能が、リスク評価にとって重要である。
   糖尿病とCKD(慢性腎臓病)はリスクの独立因子として、相互的に腎障害を悪化させる。

3) 低浸透圧と等浸透圧の造影剤がリスク軽減のために推奨されている。
   しかし、どの程度の量が適正かは未だ判明していない。
   造影剤が350ml以上、72時間以内での再度の使用はリスクとなる。
    (イオン性でなく非イオン性が日本でも推奨されています。
     イオン性の場合はイオン化により浸透圧が倍になるからとしています。)

4) 疾患によってはそのリスクは増加する。
   特に心電図でST上昇を伴う心筋梗塞の血管造影はリスクが高い。

5) 繰り返しになりますが、造影剤の検査後にクレアチニンがわずかに増加しても、又逆に低下しても
   徐々に腎機能が低下する事があるので、90日間の観察が必要となるケースもある。
   つまりクレアチニン値は造影剤で揺れる。 (fluctuation)

6) 研究(study)によっては、造影剤検査で腎障害がそれほど発生しないとする報告もある。
   しかしそのような研究は、ハイリスクの患者は事前に研究から除外されている。
   それでも造影剤検査後の重大な副作用(透析など)の頻度は、0.3%と低率である。
   だからと言って、造影検査は安全とも断定できない。 (私の訳が煮え切らないのでしょうか?)

7) 造影検査前後の輸液点滴も効果があると言う報告もあるが、ないとする発表もある。
   しかし著者は、短期的な輸液点滴を勧めている。
   従って、造影検査の1~3時間前と検査の6時間後に行う。
   ただし、輸液の量が多い方が良いかは不明である。

8) アセチルシステインは安価で予防に有効との研究もあるが、無効とする報告も散在している。

9) 脂質異常症の治療薬であるスタチン系には、予防的効果は無い。
   しかし当然ながら、心血管疾患の患者が対象なので、スタチンは継続服用を勧める。

10) 腎障害を誘発する薬剤、例えば利尿薬、降圧剤のARB、鎮痛解熱剤(NSAIDs)などは中止する
   事が適当だとするはっきりしたエビデンスはない。
   特に糖尿病治療薬であるメトグルコの一時的休薬は周知の事実であるが、それは直接的な腎障害
   ではなく、腎障害が発生した場合の乳酸アシドーシスの懸念からである。

11) まず患者のリスク評価を行う。それに従ってストラテジーを組む。
   しかしリスク評価は単に一時的判断であり、施行する検査方法にも影響を与えるので絶対的では
   ない。  (かなり慎重なコメントなので、どうしていいのか分からない。取り敢えずリスク評価を
   PDFで掲載します。)

12) かなりの点がこの論文で明白になったが、不明な点は今後の研究が待たれるとしています。
   慎重ながらも自信満々の結論です。






私見)

 本院で出来る事は

 ・造影検査を予定している患者さんにはメトグルコ、利尿薬、鎮痛解熱剤、ARBは休薬も視野に入れて
  の説明とします。
 ・造影検査後の90日間は、本院でもクレアチニンで経過を見る必要がありますが、これのみでは腎障害
  の指標にはならない様です。
 ・本論文の主旨では、適正な判断で造影検査の有意義な点を無視しないように心がける事も大切だと
  しています。
  下記のPDFに、本論文のストラテジーとuptodateの指針を掲載します。



1 本論文より.pdf

2 uptodate.pdf

3 ガイドライン.pdf















posted by 斎賀一 at 16:20| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2019年06月12日

エナジードリンク(栄養ドリンク)による心電図変化

エナジードリンク(栄養ドリンク)による心電図変化
 
Impact of High Volume Energy Drink Consumption
on Electrocardiographic and Blood
Pressure Parameters: A Randomized Trial



0612.PNG



 アメリカでは、カフェイン含有ドリンクによる救急医療機関受診や死亡例も多く報告されています。
以前の私のブログでも、ドリンクが血圧に影響すると報告しましたが、今回の論文は心電図変化です。


纏めますと

1) 健康な34名のボランティア(18~40歳の平均年齢22.1歳)を対象
   AとBの2種類のエナジードリンク(カフェイン含有量は304mg及び320mg/32オンス=907gr )
   とプラセボを使用。このエナジードリンクにはタウリン、グルクロン酸、 ビタミンも含んでいます。
   調査の48時間前から、ボランティアはカフェインとエナジードリンクを飲まないようにします。
   AとBとプラセボを別の日に、それぞれ60分以上かけて32オンス量を飲みます。
   その後30分おきに4時間まで心電図を測定します。
   心電図のQTcと血圧の変化を調べました。

2) プラセボと比較してQTcはAが6.1ms、Bが7.7ms 延長していました。
   最初の1時間の延長は、脈拍数の増加に関係すると推測されます。
   そのQTc変化は4時間も持続していました。
   血圧に関してはプラセボに比して収縮血圧が5mmHg高くなっています。

3) QT延長が30ms増加すると重大な不整脈に関与すると言われています。
   一般的にはカフェインが400mg以下では心配はないと言われていますが、本ドリンクの中にある
   タウリンとカフェインの相互作用も推定されます。
   特にQT延長症候群の実験動物では、タウリンは用量依存性にQTが延長する事が証明されて
   います。
   以前の抗アレルギー薬トリルダンは、QT延長のために発売が中止されています。
   高血圧患者やQT延長症候群の人は、特にエナジードリンクには注意が必要としています。




  
私見)
 日本のエナジードリンクは大方がカフェイン含有は50mg以下ですが、夏の暑い時に元気を出す意味で飲むのは避けたいものです。特に子供には注意が必要となります。
 (元気のないお父さん、バイアグラとの併用は禁忌です。)





Energy Drink.pdf











  
posted by 斎賀一 at 19:34| Comment(1) | 循環器